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33粒のやまぶどう  (短編物語集)

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「先生……、先生! ちょっと待ってくださいよ。何なのですか、そのイオイエ……、って?」

 中年サラリーマンの高瀬川史郎(たかせがわしろう)、働けど働けど給料上がらず、ここは気分転換にと市民講座に参加した。そして選んだテーマは『人類への進化』。

 今日はその初講義、一応オイオイの森を指差したところまでは面白かったし、理解できた。しかし、イオイエのなんじゃらかんじゃらの……、ウウアイアイとは? さっぱりわからない。これでは先へと進めないぞと、無料講座だが、ここは厚かましく手を上げた。
「高瀬川さん、グッドクエションですね」
 先生は胸の名札を覗き込み、親指を押っ立てて、余裕の笑み。それから「イオイエ エアウア ウウアイアイ」と復唱し、あとは自信たっぷりに言い放った。
「すなわち── 義を見て せざるは 勇無きなり ──ってことです」

 えっ、イオイエが……、そんな翻訳あり? しかも、ことわざ?
 教室内のあちらこちらからドシッ、ドタンの異常な物音が一斉に上がった。要は聴講生全員がその意外性にズッコケたのだ。もちろん高瀬川も椅子からゴロッと転げ落ちた。

 それにしても不思議なものだ、その続きが気になる。
「義を見てせざるは勇無きなり。とどのつまり、オオオはどんな勇気を奮い立たせたのですか?」
 この高瀬川の追っ掛け質問に、先生はニタリとし、講義続行。