33粒のやまぶどう (短編物語集)
だが、社長はこの目出度い空気を読もうともせず、「とにかく第三弾だぞ、ベストカップルは、何があっても返答は一応の〈いちおうアンちゃん〉と、文句大好きな小生意気な〈ちょっとぉネエ〉。毒気だけはどっちもどっちの二人が家庭を持ったら、どんなんかなあ? とチョー面白そうです、とにかくね」と。
「ちょっとぉー!」
語尾を異常に伸ばし、ちょっとぉネエが素早く反応しました。さらに「なんで私が何でも一応で済まそうとする男と結婚せなあかんのよ、ちょっとぉー!」と大ブーイングが響き渡りました。
だけど私は以前から、ちょっとぉネエが一応好きだったわけでして、この業務命令に便乗させてもらって、「一応、ブライダルプランを予約しようかな」とポロリと零してしまいました。するとちょっとぉネエが目を潤ませ、「ちょっとぉー!」と睨み付けてきました。
こんなハチャメチャな展開でしたが、売上貢献のためイキオイとハズミで、一応ちょっとぉネエをものにしたわけでありました。
作品名:33粒のやまぶどう (短編物語集) 作家名:鮎風 遊