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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第六話

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隆一郎に相談することもできず、雅子に尋ねることもはばかられたから、もう今は考えずに、見なかったことにしようと思い始めていた。

平成三年のこの時期は前年に大蔵省が金融引き締めをして土地取引への資金貸し出しを規制した、いわゆる「総量規制」の影響が出始めて、景気の落ち込み感が漂うようになっていた。もちろん一般市民には直接関係のない場合が多かったが、株式取引と土地取引をしている企業や関連産業には打撃が大きかった。
そして銀行は一番打撃を受けていた業種でもあった。

雅子とのデートではなく、貸し倒れや資金不足による営業実績の落ち込みで俊之の立場も逆風が吹き始めて仕事に追われる時間が彼の健康を
蝕み始めていた。

夏の日差しが照りつける8月のある日、外回りをしていた俊之は急に激しい頭痛に襲われその場に伏せてしまった。
通りがかりの人に助けられて救急車が着いたときは完全に意識をなくしていた。
運ばれた八事日赤病院で治療を受けた俊之はくも膜下出血と診断され油断を許さない状況になっていた。
駆け付けた妻の由美子と息子の隆一郎は集中治療室で人工呼吸器につながれている俊之の様子を聞いて驚いた。
作品名:「夕美」 第六話 作家名:てっしゅう