横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第五部
一服を終え、再び駅に戻る。西武線単独の駅では最大の西武球場前駅。西武ドームでの野球の試合やイベントが開催される日は、人々でごった返すこの駅も、まるで地球上から人がいなくなってしまったかのように静まり返っていた。そんな中、僕は一人、冷たい夜風に吹かれながらベンチに座り、西所沢行きの列車を待つ。来るはずもないあのひとが来るのではないかという取り留めもないことを考えながら。
やっと到着した西所沢行きの列車は、ほとんど誰も乗っていなかった。そんな状態で西武球場前駅を発車した。唯一の途中駅である下山口駅から少しだけ人が乗って来ただけで、列車は西所沢駅に着いた。
西所沢駅もまた大きな駅で、西武ドームで何かがある時は人々で溢れ返る。しかし、西武ドームで何もない時にも使われる 1 番ホームは、今日はもう店じまいしていた。池袋線の 4 番ホームへ行くと、すぐに池袋行きの鈍行が来た。次は所沢駅。もう、この旅もおしまいだ。
西所沢駅を出た列車は、住宅街の中を行き、やがて市街地へ入って行くと、新宿線をガードでまたいだ後、大きな左カーブを曲がり、旅のゴール地点である所沢駅に到着した。
さて、だいぶ遅い時間になってしまったけれど、どこかで飲んで帰ろう。またあのひとに会える飲み屋に行こうかな。そんなことを考えながら、夜の街へと足を向けた。
作品名:横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第五部 作家名:ゴメス