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横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第四部

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 発車時刻となり、品川行きの列車は南太田駅を出る。発車してしばらくすると、風景は一変。丘陵地帯から下町という感じになって来た。途中下車したい気持ちを抑え、戸部駅へと向かう。そして、ついに憧れの地の玄関口である戸部駅に到着した。


第十一章
大変なことになった。

 ようやくたどり着いた憧れの街。戸部駅に着く直前に、列車の中から〝記念湯〟なる看板の掲げられた建物が見えた。なので、まずはそちらの方へ行ってみることにした。〝記念湯〟は駅からすぐ近くで、煙突はなかったけれど、れっきとした銭湯だった。入り口の左側が飲み屋さんで、右側がコインランドリーになっていた。お風呂に入って行きたい気もしたけれど、意外にも先を急ぐ旅と言えば先を急ぐ旅なので、ここも割愛。
 とりあえず、適当に歩いてみる。初めのうちは少し大きな通りに面した商店街だった。中には昔ながらのお店もあった。ただ、かすかな記憶に残る街並みとは、どうもほど遠い。それでも、路地裏に入ってみると、本当に下町という感じがした。
 歩いていると、質屋さんの店名が書いてある立派な蔵が現れた。土蔵ではなく、石でできた蔵だった。しかし、辺りに質屋さんのようなものはなく、その蔵はすぐ向かいにある病院の駐車場の中にあった。もしかしたら、その駐車場には立派な質屋さんがあったのかも知れない。それが時代の流れで消えて駐車場になってしまい、蔵だけが残っているものだと思う。
 ふと、横を見ると、また下町のムードが漂う路地裏に出くわしたので、そちらの方に行ってみることにした。所沢にも路地裏なんてたくさんあるけれど、やっぱり知らない街ということもあって、こちらの方が魅力的だ。
あのひとのことを考えながら、あてのない街歩き。さらに歩いて行くと、目の前にはランドマークタワーがそびえ立っていた。へえ、意外と近いのだな。
 路地裏を行くと、大きな道路沿いに出た。どこにでもありそうなチェーン店もあれば、昔ながらのお店もあり、中にはあのひとと同じの名前の調剤薬局があった。何とも切ない。そんな切なさを胸に、西へ西へと進んで行く。岩亀横丁という商店街に入って行った。昔ながらのパン屋さんがあるなど、雰囲気のいい商店街だった。そのまま進んで行くと、大きな道路に出たけれど、その奥の高架橋を黄緑色の帯の電車が走っていた。あれ?あの電車は根岸線に乗り入れて来た横浜線の電車ではないか?ということは、戸部駅から桜木町駅の近くまで歩いてしまったことになるではないか!さっきからランドマークタワーも見えているし、せっかくだからみなとみらいに行ってしまおう。
 大きな道路を二つ渡ると、高架橋の下を歩く。この高架橋は、みなとみらい線の開業と同時に廃止になった東急東横線のもの。元々、東横線は根岸線と並行していたし、みなとみらい線ともほぼ並行する形だったので、廃止となった。思いもよらない廃線跡見学となった。高架橋の下は何だか外国の映画に出て来そうな雰囲気だったけれど、街灯が少ないようだったので、なるべく晩は歩きたくない場所だった。
 1キロぐらいは歩いただろうか。ようやく交差点が現れた。ここまで高架橋に切れ目はなかった。ここを左に曲がると、遠くにみなとみらいの観覧車が見えた。ランドマークタワーも、夕陽を浴びてそびえ立つ時間帯となっていた。みなとみらいから桜木町駅に続く歩道橋の下をくぐると、日本丸というやや小さな帆船が停泊していた。
 とてもきらびやかな街だ。夕暮れ時でも賑わっている。さっきまで遠くに見えていた観覧車が近くに見える。 その真ん中には時計が付いており、それを見ると、気が付けば 4 時半を回っていた。小さな遊園地もあって、本当に賑やかな街だった。もう少しあのひとのことを考えながら歩いてみたかったけれど、そろそろ所沢に戻ることにしよう。踵を返し、桜木町駅へ向かった。
 桜木町駅前にもまた、大きなビルがある。そちらの方に向かいながら歩き、歩道橋へと上がる。随分長い歩道橋で、動く歩道まであった。歩道橋を 10 分ぐらい歩き、階段を下りると、駅前広場に出た。人々が闊歩し、一人のストリートミュージシャンが歌い。そんな中を歩いて桜木町駅の乗り場へと向かった。
 桜木町駅始発の列車に乗りたかったけれど、直近の始発列車は全て横浜線直通列車だった。横浜線の電車も置き換えが決まっているので乗っておきたかった。けれど、時間もないので京浜東北線の南浦和行きに乗った。少し混んでおり、ドアの横に立って、ぼんやりと外の景色を眺めていることにした。