横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第三部
何でも、横須賀の海軍カレーには、牛乳とサラダをセットで付けるのが決まりらしい。まず、牛乳とサラダ、そして福神漬けが運ばれて来た。その後、ウーロンハイが運ばれて来て、それを飲んでいるとカレーも来た。ルーとライスが別になっている。昔の海軍の人は、こんな七面倒臭いものを食べていたのか!そう思いながら食べていた。辛口を注文したけれど、いつももっと辛いカレーを食べている僕には、少しばかり辛さが足りなかったし、明治時代と現代とでは味の濃さの感覚も違うのか、少し味も薄い気がした。とは言え、貴重なものを食べられた。食後のコーヒーを飲み、お店を出た。
さて、駅に向かい、品川方面に行く列車の乗り場へ行く。さあ、これから京急線の旅が始まる!
第八章
京浜急行線に揺られて
10 年ぶりと言うわけではないけれど、それに近い時間、乗ることのなかった京急線。最後に乗った時は、何をしていたかは覚えていない。ただ、京急川崎駅から横浜駅まで乗ったような気がする。横浜駅が今まで京急線に乗った中で一番遠くなので、横浜駅から先のこの区間には乗ったことはない。またもや未開の地に足を踏み入れることとなる。ここから先は、戸部駅まで気になった名前の駅で降りて行く。まさにテレビ番組の『ぶらり途中下車の旅』だ。何と言っても時間がたくさんある。ノープランの旅だが、横浜駅には夕方過ぎに着く。それでも、とにかくいろいろな駅で降りるつもりだ。
プラットホームへ行くと、列車の接近を知らせる音楽が鳴っていた。これが山口百恵の名曲、『横須賀ストーリー』を編曲したものだそうで。案内放送の後に到着した赤い電車は、前から乗ってみたかった電車だった。京急電車はあまり詳しくないけれど、確か、800 形という名前だった気がする。憧れの電車に、こんなにも簡単に 乗れるとは……。この電車は、一枚のドアが片側に開くのが特徴だ。
憧れの電車に乗ったら、すぐにドアの上に掲示されている路線図を見る。うん。安針塚駅で降りてみよう。下車駅が決まったところで、ふと、気が付いたことがあった。前から 2 両目に乗ったけれど、先頭車両の運転室との仕切りの所に行くと、シートに座ったままで運転室からの景色を見られるようだった。よし、そっちへ行ってみよう。昔の西武電車にもこのような席があり、〝特等席〟と呼ばれていたけれど、京急電車でもそのような呼 び名はあるのだろうか?西武電車でいう〝特等席〟からの展望を楽しんでいるうちに、赤い電車は安針塚駅に着いた。
何でも、この安針塚駅は三浦という人のお墓がある公園が近いらしい。しかし、その公園がどこにあるのか、その案内の看板がなかった。ただ、この駅からベイスターズの練習場が近いようで、その案内の看板はあった。練習場の案内の看板に書いてあったチーム名は、〝横浜ベイスターズ〟のままだった。ベイスターズの練習場は田浦駅からの廃線跡を歩いて行っても近いので、案外、この駅から田浦駅まで歩いて行けるかも知れない。今は そんなことしないけれど。今度の列車で次へ行くことにした。安針塚駅は、丘陵地帯の静かな駅だった。この駅からまた 800 形に乗ることができた。
ここから先、京急田浦駅と駅の間では、昨年、大きな土砂崩れが起きた。その現場を通ることとなる。しかし、次はどこで降りようか考えているうちに通り過ぎてしまった。全く気付かなかった。追浜駅に着く直前で、この駅の名前に〝浜〟がつくのだから、海が近いのではないかと思った。降りてみよう。そう思ったのは列車が追浜駅に到着した直後。発車間際の列車を降りた。
ところが、降りた意味があったのだろうか。およそ海が近いとは思えない。とりあえず、右手にアーケード街があったので、少しそこを歩いてみることにした。タバコが吸いたかったので、ドトールのようなお店でもあればいいのだけれど、多分、ないと思う。ただ、通りの中にあったセブンイレブンの前に灰皿があったので、そこで一服。さっきからこの商店街の軒先には、横浜・F・マリノスのペナントがぶら下がっていたので、もうここは横浜市かと思えば、まだ横須賀市だった。
大通り沿いのアーケード街。別に気を惹かれるお店はないけれど、歩いていて楽しい。そんな中で、おしゃれなカフェがあったので、入ってみた。タバコは吸えないみたいだけれど、ここで拙稿をまとめて時間調整をすることに。ピアノの曲が心地よい落ち着いた店内での物書きは、時間を忘れさせてくれる。気が付けば、一時間も佇んでいた。
あんまり長居しては迷惑だろうから、程々にしてお店を出た。またアーケード街を歩き、駅へ行く。乗り場に着いてからしばらくして来た電車は、銀色の電車。新1000 形というらしく、元々はアルミだったか鉄板で造られていた電車だった。けれど、製造の途中からステンレス製となり、これが京急で初のステンレス製電車のだとか。この電車で、次はどこへ行こう。次は金沢八景駅。八景島シーパラダイスの近くだろうか。そうだとしたら、これは定番すぎるので、ここでは降りない。その次の金沢文庫駅で降りてみよう。
作品名:横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第三部 作家名:ゴメス