横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第二部
第四章
湘南新宿ラインは行く
いつも池袋駅に着いたら、駅前の喫煙所で一服して行く。これから先、しばらくタバコを吸えないので。この街は、僕が大学を中退して、最初に就職した会社がある街だ。その会社の人事部があるオフィスと今の会社は、どうも近所らしい。よっぽど僕はその地区に人事部がある会社に縁があるのだなあと痛感している。
一服を終えたら、JR線乗り場へ行く。いろいろと考えたけれども、まずは横須賀線の田浦駅へ向かうことにした。前もってインターネットの乗り換え案内で調べたら、この駅から湘南新宿ラインに乗るのが早く田浦駅に着く方法らしい。本当ならば〝休日おでかけパス〟というフリー切符を買うつもりだった。けれど、京急線に乗ると考えると、どうも元が取れるような気がしない。なので、そのままそれなりにお金をチャージしてある PASMO で改札を通った。
湘南新宿ラインに乗るのは、去年の 7 月以来。インターネットを通じて知り合った方とそのご友人と共に鎌倉の辺りを散策した時だった。その時は横須賀線直通の列車に乗り、北鎌倉駅まで行った。本当に印象的なひと時を過ごすことができた。今日もまた、印象的なひと時を過ごしたいものだ。
ちょっと悩んだが、せっかくの〝初乗り〟なので、グリーン車で行くことにした。券売機で PASMO にグリーン券の購入情報を登録し、乗車口で待つ。到着したのは、オレンジ色と緑色の〝湘南カラー〟の帯が入った 15 両編成の電車だ。グリーン車は混んでいた。仕方なしに適当に席を見繕って座ったが、これが失敗。後ろのババアが大声で騒いでいる。うるさいことこの上ない。
うるさいながらも、あのひとのことをぼんやりと思い巡らせているうちに、列車は会社のある高田馬場の街を通過して行く。所沢駅から西武新宿線に乗って高田馬場駅か西武新宿駅へ行ってしまう手もある。しかし、高田馬場駅で山手線に乗り換えても山手線の列車は混んでいるし、西武新宿駅から新宿駅は離れているので、池袋駅へ行って乗り換えてしまった方が楽だ。
昨日は、会社に行きたくて仕方がなかった。9 連休は退屈だし、会社や会社の皆さんが大好きだから。こんなに残酷な正月があっただろうか?まあ、今日のところは会社のことは忘れて、ぼんやりとあのひとのことを考えて旅をしよう。
列車は新宿駅を過ぎ、渋谷駅に到着。この駅は前職を退職した後に通っていた専門学校の最寄り駅だ。その専門学校は統廃合のために追い出された。しかし、統廃合したという割には、当時の看板が今でもしっかり残っているのを、昨年、確認している。意外と、まだ僕がいた専門学校のままだったりして。
恵比寿、大崎の両駅を過ぎ、東海道線の支線に入って行く。この路線の通称を品鶴線なんていうらしい。快速列車なので、次は武蔵小杉駅に停車する。東京総合車両センターの横を通り、それからしばらくして、東海道新幹線と並んで走る。多摩川を渡ると神奈川県に入り、間もなく武蔵小杉駅に到着。最近になってできた駅だけれど、同じ JR の南武線や東急東横線の乗り場とは少し離れている。
武蔵小杉駅を出ると、すぐに新川崎駅を通過する。この駅の横には、JR 貨物の新鶴見機関区があり、旧型機関車から新型機関車まで、たくさんの機関車が体を休めていた。実はこの新鶴見機関区には、西武線で使われていたすごく古い機関車が保管されているとかいないとか。
新鶴見機関区の横を過ぎると、東海道線は止まらないものの、鶴見駅の中へ入って行く。今まで乗って来た路線は品川駅と鶴見駅を結ぶ支線だから品鶴線。進行方向右側には、鶴見線の高架橋が見える。一昨年の乗り納めが鶴見線だった。本当に心がほのかに温かい旅だった。今回の旅は、それを凌ぐほどの旅だったら嬉しい。あのひとを想いながらのこの旅が……
横浜駅に近づくにつれて、遠くにランドマークタワーなどの高層ビルが見えて来る。そんな風景を横目に、横浜駅に到着した。大船駅もだんだんと近づいてきた。相変わらず、後ろのババアがうるさい。もう少しだから我慢するけれど……
もう少しで、戸塚駅に着く。
第五章
横須賀線に乗る
保土ヶ谷駅を通過すると、長いトンネルに入る。この辺りは丘陵地帯のようだ。そのトンネルを抜けると、東戸塚駅を通過する。ここまで 2 つの駅を通過したけれど、今、走っている線路にプラットホームはなかった。保土ヶ谷駅や東戸塚駅の辺りはベッドタウンという感じだったが、戸塚駅の手前から工場も増えて来る。
戸塚駅に着く直前にふと外を見ると、雲間から幾筋もの陽光が神々しいばかりに降り注いでいた。何となく、あのひとの笑顔を思い出した。
〈あのひとは、元気にしているだろうか〉
そんなことを考えているうちに、列車は戸塚駅を発車し、下車駅の大船駅に向かって走っていた。
相変わらず工場の多い一帯を駆け抜けて大船駅に着く直前、進行方向右手にある高台から白い観音様が見下ろしていることに気付く。実に巨大なものだが、実はその観音様、胸像のような構造をしている。これで足まであったら、多分、相当巨大な観音様になると思われる。
やっと大船駅に到着。最後までババアはうるさいままだった。ここで横須賀線に乗り換える。本当は前の戸塚駅で乗り換えた方が楽だったかも知れない。しかし、グリーン券を大船駅まで買ってしまったので、大船駅まで来た。横須賀線の久里浜行きは、橋を渡った 8 番線からすぐの発車のようだった。乗ってみると、随分と混んでいる。時期柄、みんな鎌倉のお寺にお参りに行くのだろうか。混んでいる列車は、大船駅を発車した。次は北鎌倉駅。
さっきもインターネットを通じて知り合った方々と鎌倉散策をした際に北鎌倉駅まで行ったと述べたが、この駅に降り立った時、随分と古い構造の駅だったことに驚いた。駅舎とプラットホームを行き来するのに、跨線橋ではなく踏切を渡って行き来する構造だった。その踏切を〝構内踏切〟というけれど、これは地方の駅に多い。
その北鎌倉駅を出て、次の鎌倉駅に着くと、案の定、みんな下車した。車内は、さっきとは打って変わってガラガラになってしまった。何となく、鎌倉駅の次が田浦駅だと思い込んでいた。しかし、実際は鎌倉駅と田浦駅の間に、逗子と東逗子の両駅がある。逗子駅の周辺も面白いが、今日は割愛。
逗子駅で 5 分ほど停車する。15 両編成の列車はここで 4 両切り離して 11 両編成となって久里浜駅へ向かう。けれど、この列車は元から 11 両編成だから、切り離し作業はない。5 分も止めるならば、タバコぐらい吸わせて欲しい。それは我慢できたとしても、せめて 4 つあるドアのうち、3 つのドアを閉めて欲しい。朝の西武線でよくやっている。寒い!
何とか寒さを耐え、発車時刻に。雲が多くなってきた天気ではあるが、空は明るい。遠くに、なだらかな丘に並ぶ家々が見える。こういう景色、好きだなあ。あのひとが隣にいてくれれば二人で見られたのに……。そう思わせる景色の中、列車は東逗子駅に到着。この東逗子駅は駅名標が国鉄時代のままで、「神奈川県逗子市」と駅の所在地まで書かれている。
湘南新宿ラインは行く
いつも池袋駅に着いたら、駅前の喫煙所で一服して行く。これから先、しばらくタバコを吸えないので。この街は、僕が大学を中退して、最初に就職した会社がある街だ。その会社の人事部があるオフィスと今の会社は、どうも近所らしい。よっぽど僕はその地区に人事部がある会社に縁があるのだなあと痛感している。
一服を終えたら、JR線乗り場へ行く。いろいろと考えたけれども、まずは横須賀線の田浦駅へ向かうことにした。前もってインターネットの乗り換え案内で調べたら、この駅から湘南新宿ラインに乗るのが早く田浦駅に着く方法らしい。本当ならば〝休日おでかけパス〟というフリー切符を買うつもりだった。けれど、京急線に乗ると考えると、どうも元が取れるような気がしない。なので、そのままそれなりにお金をチャージしてある PASMO で改札を通った。
湘南新宿ラインに乗るのは、去年の 7 月以来。インターネットを通じて知り合った方とそのご友人と共に鎌倉の辺りを散策した時だった。その時は横須賀線直通の列車に乗り、北鎌倉駅まで行った。本当に印象的なひと時を過ごすことができた。今日もまた、印象的なひと時を過ごしたいものだ。
ちょっと悩んだが、せっかくの〝初乗り〟なので、グリーン車で行くことにした。券売機で PASMO にグリーン券の購入情報を登録し、乗車口で待つ。到着したのは、オレンジ色と緑色の〝湘南カラー〟の帯が入った 15 両編成の電車だ。グリーン車は混んでいた。仕方なしに適当に席を見繕って座ったが、これが失敗。後ろのババアが大声で騒いでいる。うるさいことこの上ない。
うるさいながらも、あのひとのことをぼんやりと思い巡らせているうちに、列車は会社のある高田馬場の街を通過して行く。所沢駅から西武新宿線に乗って高田馬場駅か西武新宿駅へ行ってしまう手もある。しかし、高田馬場駅で山手線に乗り換えても山手線の列車は混んでいるし、西武新宿駅から新宿駅は離れているので、池袋駅へ行って乗り換えてしまった方が楽だ。
昨日は、会社に行きたくて仕方がなかった。9 連休は退屈だし、会社や会社の皆さんが大好きだから。こんなに残酷な正月があっただろうか?まあ、今日のところは会社のことは忘れて、ぼんやりとあのひとのことを考えて旅をしよう。
列車は新宿駅を過ぎ、渋谷駅に到着。この駅は前職を退職した後に通っていた専門学校の最寄り駅だ。その専門学校は統廃合のために追い出された。しかし、統廃合したという割には、当時の看板が今でもしっかり残っているのを、昨年、確認している。意外と、まだ僕がいた専門学校のままだったりして。
恵比寿、大崎の両駅を過ぎ、東海道線の支線に入って行く。この路線の通称を品鶴線なんていうらしい。快速列車なので、次は武蔵小杉駅に停車する。東京総合車両センターの横を通り、それからしばらくして、東海道新幹線と並んで走る。多摩川を渡ると神奈川県に入り、間もなく武蔵小杉駅に到着。最近になってできた駅だけれど、同じ JR の南武線や東急東横線の乗り場とは少し離れている。
武蔵小杉駅を出ると、すぐに新川崎駅を通過する。この駅の横には、JR 貨物の新鶴見機関区があり、旧型機関車から新型機関車まで、たくさんの機関車が体を休めていた。実はこの新鶴見機関区には、西武線で使われていたすごく古い機関車が保管されているとかいないとか。
新鶴見機関区の横を過ぎると、東海道線は止まらないものの、鶴見駅の中へ入って行く。今まで乗って来た路線は品川駅と鶴見駅を結ぶ支線だから品鶴線。進行方向右側には、鶴見線の高架橋が見える。一昨年の乗り納めが鶴見線だった。本当に心がほのかに温かい旅だった。今回の旅は、それを凌ぐほどの旅だったら嬉しい。あのひとを想いながらのこの旅が……
横浜駅に近づくにつれて、遠くにランドマークタワーなどの高層ビルが見えて来る。そんな風景を横目に、横浜駅に到着した。大船駅もだんだんと近づいてきた。相変わらず、後ろのババアがうるさい。もう少しだから我慢するけれど……
もう少しで、戸塚駅に着く。
第五章
横須賀線に乗る
保土ヶ谷駅を通過すると、長いトンネルに入る。この辺りは丘陵地帯のようだ。そのトンネルを抜けると、東戸塚駅を通過する。ここまで 2 つの駅を通過したけれど、今、走っている線路にプラットホームはなかった。保土ヶ谷駅や東戸塚駅の辺りはベッドタウンという感じだったが、戸塚駅の手前から工場も増えて来る。
戸塚駅に着く直前にふと外を見ると、雲間から幾筋もの陽光が神々しいばかりに降り注いでいた。何となく、あのひとの笑顔を思い出した。
〈あのひとは、元気にしているだろうか〉
そんなことを考えているうちに、列車は戸塚駅を発車し、下車駅の大船駅に向かって走っていた。
相変わらず工場の多い一帯を駆け抜けて大船駅に着く直前、進行方向右手にある高台から白い観音様が見下ろしていることに気付く。実に巨大なものだが、実はその観音様、胸像のような構造をしている。これで足まであったら、多分、相当巨大な観音様になると思われる。
やっと大船駅に到着。最後までババアはうるさいままだった。ここで横須賀線に乗り換える。本当は前の戸塚駅で乗り換えた方が楽だったかも知れない。しかし、グリーン券を大船駅まで買ってしまったので、大船駅まで来た。横須賀線の久里浜行きは、橋を渡った 8 番線からすぐの発車のようだった。乗ってみると、随分と混んでいる。時期柄、みんな鎌倉のお寺にお参りに行くのだろうか。混んでいる列車は、大船駅を発車した。次は北鎌倉駅。
さっきもインターネットを通じて知り合った方々と鎌倉散策をした際に北鎌倉駅まで行ったと述べたが、この駅に降り立った時、随分と古い構造の駅だったことに驚いた。駅舎とプラットホームを行き来するのに、跨線橋ではなく踏切を渡って行き来する構造だった。その踏切を〝構内踏切〟というけれど、これは地方の駅に多い。
その北鎌倉駅を出て、次の鎌倉駅に着くと、案の定、みんな下車した。車内は、さっきとは打って変わってガラガラになってしまった。何となく、鎌倉駅の次が田浦駅だと思い込んでいた。しかし、実際は鎌倉駅と田浦駅の間に、逗子と東逗子の両駅がある。逗子駅の周辺も面白いが、今日は割愛。
逗子駅で 5 分ほど停車する。15 両編成の列車はここで 4 両切り離して 11 両編成となって久里浜駅へ向かう。けれど、この列車は元から 11 両編成だから、切り離し作業はない。5 分も止めるならば、タバコぐらい吸わせて欲しい。それは我慢できたとしても、せめて 4 つあるドアのうち、3 つのドアを閉めて欲しい。朝の西武線でよくやっている。寒い!
何とか寒さを耐え、発車時刻に。雲が多くなってきた天気ではあるが、空は明るい。遠くに、なだらかな丘に並ぶ家々が見える。こういう景色、好きだなあ。あのひとが隣にいてくれれば二人で見られたのに……。そう思わせる景色の中、列車は東逗子駅に到着。この東逗子駅は駅名標が国鉄時代のままで、「神奈川県逗子市」と駅の所在地まで書かれている。
作品名:横須賀・横浜旅行記 ふんわりと、風のごとく 第二部 作家名:ゴメス