小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

6cmの彼女

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

薄荷水(はっかすい)




 蜘蛛の巣にひっかかった蝶を助けたのは、明日、ボロボロの羽根だけになっているのを見たくなかっただけ。



「きみは?」


 問われて我に返った。
 店の一角。
 少年が僕を見ている。蓮の花を模した灯りが揺れている。
「なに」
「薄荷水だよ。清明の夜に、他になにがある」
 表に並ぶ花の名。それの種類なのだろうが、全く見当がつかない。

「ご注文は」
「あ、ツツ、」
「菜の花。二つ」
 彼は僕を遮って注文を通した。
「ツツジは美味いけれど毒があるんだよ。酩酊する」
 それで酷い目にあった、と呟く。


 運ばれて来たのは光を溜めた黄色。蜜のような味に僕は眉をしかめた。
「これがいいんじゃないか」
 彼が笑う。



 気がつくといつもの道にいた。
 蝶がふわりと遠ざかる。
作品名:6cmの彼女 作家名:なっつ