サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第二十二話
たとえ安い言葉でも、言うべきことはあるはずなのだ。
それは、三輪さんの本当の気持ち。
「確かに、それはもう、戻ってこないかもしれない。でも、本当に失くすって言うことは、失くした事すら気付かないことだと思うんだ。おじいさんは、まどかちゃんに、それだけはさせたくなかったんだと思うよ。それにさ、おかげでっていうのは変だけど、オレはこうしてまどかちゃんに会えたから。会えたことが……嬉しかったりする」
自然出た言葉は、掛け値なしの真実だった。
そう、嬉しかったんだ。
オレには一生ないと思っていた出会い。
そんな奇跡がオレに起こって、本当に嬉しかったんだ。
心の底から。
「雄太さんは……わたしがほんとうに欲しいと思った言葉をくれるんだね」
まどかちゃんは微笑んでいた。
心の底から、嬉しそうに。
さっきから見とれてばかりなのに。
それはあまりにも感動的で、きれいで……。
(第23話につづく)
作品名:サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第二十二話 作家名:御幣川幣