夢ではない冒険
「おにいちゃん、ビックリしたでしょ?でもお兄ちゃんなら飛ばされはしないよ。前に行きなよ。前に行ったら、次が待ってるんだから。頑張ってね。それから、赤を忘れないでね。赤は全ての色なんだから。忘れないで」
俺は足を踏み入れた。そうしたら、ふわっとした空間があった。落下する!と思ったが、足がふわふわと浮いているのに気づいた。宙に浮いている?
周りを見ると、オモチャやらお菓子やら、アイコンやら丸いものが浮いていた。俺はパンツのポケットを探ってみると、中に小さな固い感触があった。良かった。ビー玉はまだ無くなっていないみたいだ。
徐々に自分の意識は薄くなっていった。自分はこの何もない、何もかもがある空間に徐々に包まれていくのだ。いや、正確に言うと、この空間全てが、俺の中身と一体化していくのだ。俺は今、吸収して大きくなっていく。意識が遠のいていく。穏やかな、安らぎに満ちていく。胸にへばりついている黒い粘々も、今は感じない。
「消えはしないよ。お兄ちゃんはクリアをしてないんだから」
少年の声が聞こえた気がした。