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私の読む「源氏物語」ー69-椎本ー2

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「来る早々薫様は覗きなさるまいと思います」 と若い女房達はあっさりと言うのである。大君は、
「薫様が覗きみされたら困りますことであるが」
 と言って、気がかりそうに、奥の方へ膝をすべらして入る動作が、気品がありその上に奥ゆかしい風情が加わって見えた。鈍色の袷と単衣との一かさねは、中君とは同じような色合いを着ているが、大君のは、心をひかれるように、優雅で、寂しそうなので、覗き見する薫は自然気の毒に思うのである。髪はさっぱりした程度に、心労のために少し脱け落ちたのであろう、髪の末の方が少し細くなって、「色髪である」とかいうように見える、翡翠の羽のような色で、大層美しい様子で、糸を蹉りかけた状態に整っている。(「色なり」は、只、黒一方でなく、濃い藍色を帯びてつやつやした毛色である。いわゆる「みどり(濃い藍色)の黒髪」である。「翡翠」はカワセミであるが、その羽の色は、光沢のある濃い藍色)
 大君は紫の紙に書いた経巻を、片手に持っている手は、中君よりも細く、ずっと痩せているのであろう、立っていた中君も襖口に坐っていて、何の話をしているのだろうか、大君を見て笑っている姿は、大君は年長で長年の生活環境から心配性になり、中君は、大君よりは暢気なのであろう可愛らしい様子であった。(椎本終わり)