私の読む「源氏物語」ー49-若菜 上ー4
小侍従はあまり文に興味を示さない三宮を見て興ざめして三宮が無理に文を書くようなことでもないので、柏木に返事を書く、
「先日の蹴鞠の折に、垣の中に分け入られた貴方を見ましたが、素っ気ない態度でした。それ故恨めしいと思って、私が、御簾の中などを見ることを許さなかったのに三宮に御目にかかったように仰せられるのは、どういう事でありますか」
御簾のことを知らない小侍従は走り書きに書いた、そして最後に
いまさらに色にな出でそ山桜
およばぬ枝に心かけきと
(今改めて顔色に出して人に知られなさるな、到底、手の届かないどの道恋のかなわぬ山桜の枝三宮に、思いをかけたと)
なんと言っても三宮様への恋は無駄な事でありますよ」
と達筆に書いた。
(若菜上終わり)
作品名:私の読む「源氏物語」ー49-若菜 上ー4 作家名:陽高慈雨