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私の読む「源氏物語」ー46-若菜 上ー1

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 源氏は優しく紫に言い聞かせた。紫は急に天から降ってきたような今回の三宮の源氏への降嫁について、源氏としては避けることが出来ない問題で辞退のしようがない事であるから、源氏に対して、嫉妬がましいことは言えない。源氏も私に遠慮をしているところもあり彼の言うことにはおとなしく従うことにしよう。源氏が自分から三宮に懸想したのでもないのであるから今回の降嫁のことを阻止することは出来ないことながら、紫は自分が思い悩んでいることを世間に漏れるようなことはしてはならない。髭黒と玉鬘の結婚の時も、彼の妻であった腹違いの姉を離縁したことでその生みの母である継母の式部卿宮の北の方から小言を受けたことを思い出した、それは継母である式部卿宮の夫人即ち大北方は、玉鬘が鬚黒に嫁したのも、紫上の世話であると誰かから噂を聞きそれを真に受けて紫をよく思っていなかった。というのも鬚黒離縁したもとの北方は、この大北方の娘であったのであるが、物怪に悩んで鬚黒から離縁せられ、実家即ち式部卿宮に帰って行った。このことは「真水柱」の項で詳しく紹介した。そのようなことから紫は風評の怖さをよく知っていたからで、今回の三宮のことでも風評を一番畏れていたのであった。もともと紫はおおらかな性格であるが、今回の風評に気のつかない事はないのであた。
 紫は源氏が浮気性であるとしても、もう安心である、本妻になっている自分の身を何の心配もないとよい気になって、何の心配もなく過していると信じていたのが、今回の三宮のことは内心には相当な打撃であったが、世間の笑いものになってはと表面的にはおおらかに人と接していた。
 
新しい年がまたやってきた。朱雀院は出家の身でありながらも三宮の源氏との結婚の準備を急がせていた。三宮を我妻にと考えていた人達は源氏の妻になったことを聞いて皆がっかりしていた。帝も三宮を内裏に迎えたいと思っていたのであるが、源氏との話が纏まりかけていることを聞いてあきらめてしまった。
 さて、源氏は今年に四十歳を迎えることになる。帝も源氏が四十の賀を迎えることを聞きそのまま聞き捨てには出来ず、多くの上達部も以前から源氏の四十の賀のことが評判になっていたのでいろいろと源氏を祝う催しを考えていたのであるが、源氏は大層なことを自分のためにすることがあまり好きでない性格から、すべて辞退していた。ところが、
 正月の二十三日子の日に突然左大将の北の方が若返る縁起があるものとして若菜十二種類ををもって祝いに六条院に来訪してきた。この北の方はかっての玉鬘である。彼女は源氏の性格を知っていたので表だって源氏を訪問すればきっと断られると思い。秘密のうちに計画をして関係する者達を固く口止めをして計画を進めていた。左に大将の正婦人である上に太政大臣の娘でもあるので目立たないようにと、こっそりとした行動であっても六条院への道のりは堂々とした行列を組むようになってしまっていた。 
 玉鬘の訪問を受けた源氏の六条院は予期せぬ訪問で源氏の周りの者は慌てて母屋の西側に臨時に設けた室放出に、源氏の座を急いで造り、放出は廂の間などを物で囲って、祝賀の屏風や壁代から始め、古い物を取払って、新しい物で設備した。儀式張って源氏の座として倚子を置くようなことはせず、地敷きを四十枚を並べてその上に茵・脇息そしてお祝いの用品を清楚に並べた「これはまた本当に悲しいしみじみと同情に堪えない嫁取りでありますこと、私がどうして嫉妬などいたしましょう。私が今まで通りにこの六条院で暮らすことを三宮がおいやでなければ私は気持ちを落ち着けて過ごすことが出来ますは、三宮の母上は私の父式部卿の妹でありますから私を疎まないでしょう、従姉妹ですものね、三宮もそのように思っておられるでしょう」
 と少しへりくだって源氏に答えていた。
「あなたがこのように心やすく承諾されては、
私にはもう愛情がなくなったのかと少し心配になりますね。せめて、あなたの大きな心で今回の三宮のことを許していただき紫も三宮も気持ちを分け合って、あの通りかわいい子供であるから優しくしてくださいよ。これからつまらない噂を貴女に吹き込む者達がいることでしょうが、そのようなことで心を動かさないようにして下さいね。他人の夫婦仲などはわからないものなのに勝手なことを言いふらす者ものです。
どんなことを言われたり聞いたりしても貴女の胸に納めて、事実を確かめた上で処置するのが一番ですよ、事実でもないことで早まって大騒ぎをしてつまらない嫉妬などをしないようにね。」
 源氏は優しく紫に言い聞かせた。紫は急に天から降ってきたような今回の三宮の源氏への降嫁について、源氏としては避けることが出来ない問題で辞退のしようがない事であるから、源氏に対して、嫉妬がましいことは言えない。源氏も私に遠慮をしているところもあり彼の言うことにはおとなしく従うことにしよう。源氏が自分から三宮に懸想したのでもないのであるから今回の降嫁のことを阻止することは出来ないことながら、紫は自分が思い悩んでいることを世間に漏れるようなことはしてはならない。髭黒と玉鬘の結婚の時も、彼の妻であった腹違いの姉を離縁したことでその生みの母である継母の式部卿宮の北の方から小言を受けたことを思い出した、それは継母である式部卿宮の夫人即ち大北方は、玉鬘が鬚黒に嫁したのも、紫上の世話であると誰かから噂を聞きそれを真に受けて紫をよく思っていなかった。というのも鬚黒離縁したもとの北方は、この大北方の娘であったのであるが、物怪に悩んで鬚黒から離縁せられ、実家即ち式部卿宮に帰って行った。このことは「真水柱」の項で詳しく紹介した。そのようなことから紫は風評の怖さをよく知っていたからで、今回の三宮のことでも風評を一番畏れていたのであった。もともと紫はおおらかな性格であるが、今回の風評に気のつかない事はないのであた。
 紫は源氏が浮気性であるとしても、もう安心である、本妻になっている自分の身を何の心配もないとよい気になって、何の心配もなく過していると信じていたのが、今回の三宮のことは内心には相当な打撃であったが、世間の笑いものになってはと表面的にはおおらかに人と接していた。