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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第三話

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頭を下げて、夕美はじっと晴樹の目を見つめながら、退出した。
夕方には少し早いけど、吹き付ける北風は冷たく自分たちの境遇と似ているとふと感じた。
地下鉄はラッシュ前で空いていた。八事(やごと)駅まで座って、間もなく夕美は大森家の玄関に着いた。

「ただいま帰りました」

呼び鈴を押して夕美はそう伝えた。
ガチャっと音がしてロックが解除されると目の前に隆一郎が立っていた。

「お帰り。お腹空いたよ。ご飯にしてくれる?」

「はい、すみません遅れてしまって・・・」

「そんなことないよ。まだ5時ちょっとだからね。今日は朝早くから起きているからそう感じるんだよ」

心配していたような暗い表情も見せずに話されて、夕美は少し安心した。
警察に連れて行かれたのであろう隆一郎は、やはりなにかの間違いだったのではないかとも思えた。
二階に上がっていつものジャージに着替えて、エプロンを羽織って台所に立つと考えていたメニューを次々と作ってゆく姿があった。

「父さんは内緒にしろと言っていたけど、夕美には聞いて欲しいことがあるんだ。食事がすんだら聞いてくれないか?」

「はい、どのようなことなんでしょう?」

「その時に話すよ。まずは飯が食いたい」

「はい、今すぐに・・・」

夕美は自分が見た警察に逮捕された状況を話してくれるんだと考えていた。
食事の支度が出来て、母親と父親をお呼びします、と言った言葉を遮るように、

「二人とも出て行って居ないよ。僕と夕美とで一緒に食べよう」

と隆一郎は答えた。
作品名:「夕美」 第三話 作家名:てっしゅう