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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「夕美」 第三話

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「な、母さん、そうなんだよ。父さんは会社人間としては立派だけど、父親としては失格なんだよ。俺たちと旅行とか行ったことあるか?
一緒にご飯食べて、一緒にお風呂とか入ったか?俺の心配事や悩み事を聴いてくれたことがあるか?母さんにも同じことが言えるだろう?
違う?」

「あなたは本当のお父さんを知らないからそんなこと言うのよ。日本で一二を争う大手銀行の重役というのは誰でもなれるもんじゃないのよ。
国でいうと大臣みたいなもの。そんな立派な職業を持つ父親がいることを誇りにこそ思って不満なんかいうもんじゃないよ」

「俺は、母さんが可哀そうだとずっと思ってきたから、そういうんだよ。俺にとって大切なのは父さんじゃなく、母さんなんだよ」

「隆一郎・・・」

そのあとを由美子は言えずに泣き出してしまった。夕美は隆一郎のことをすっかり見直していた。世の中にはこんなしっかりとした考え方をしている
高校生がいるんだと感心して聞いていたからだ。
不幸な家に生まれた逆境から強くなることも、裕福すぎても自らを見失うことなく強くなれることも、本人の考え方次第なんだと勇気を与えられているような気持なっていた。
作品名:「夕美」 第三話 作家名:てっしゅう