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　もうこれまでだと諦めて、それぞれあちらこちらへと散りじりに去っていった常陸宮の女房達が、末摘花の許に源氏が帰ってきたことを知ると、我も我もと争って復帰を申し出てきた。
　おっとりとした末摘花の許に気楽に仕えていた女房達は、たいした位でもないようなつまらない受領などの処に再就職して、今まで経験したこともないきつい仕事に、とても耐えきれないと思っていたところに、前の主人の下に源氏が訪れたことを聞いて帰ってくる者もある。源氏は以前にも勝る権勢となり、心持ちも何かにつけて思いやりの心が更に加わって、この宮の復活に細々と指図しているので、末摘花の周りも明るく活気づいて、邸の中もだんだんと働く人の姿も多くなった。庭の木や草の葉も長年荒れ果てて見えていたのも、遣水を掃除し、前栽の根元を綺麗に掃除して見栄えがするようになった。大して目をかけて貰えない下働きの者達も、源氏が色々と指図をして大切に扱ってくれるので源氏にああだこうだと言いながら仕えるようになった。。

　末摘花は源氏と再会してから二年ほど、荒れた屋敷を修復して住んで退屈な日々を過ごしていたが、源氏の屋敷の二条院の東側にかねてから新築をしていた御殿が完成したのでそちらの方に移り住んだ。それ以後は紫の上のこともあって逢うことは難しかったが、屋敷が隣なので、時々源氏は訪問して彼女をほっておくようなことはしなかった。
　九州の太宰府に下った叔母が京にやってきて末摘花の現状に驚き、それをかっての女房である侍従が嬉しそうに見ているが、もう少し我慢をすれば良かったと自分の短慮を嘆くのであった。
　もう少しこの姫のことを書きたいのであるが、この姫の性格から考えるだけでも頭が痛くなるので、この後ついででもあれば書くことにしてひとまず筆を置く。
（蓬生終わり）