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私の読む「源氏物語」ー20-

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 源氏の近くにきた明石の君を、人柄はとても上品であると思った。几帳の中にはいることに少し彼女は抵抗感があったが、それでも源氏に導かれて入ってきた。着ているものを脱いで横になると今までは分からなかったが彼女はすらりとして細身の体であった。源氏は女を美しいと気後れするような感じがする。都を離れてから女と接しなかったため男の血が騒ぐのであるが、そこはぐっと堪えてゆっくりと女がその気になるまで色々と優しい言葉をかけていた。女の腰ひもをほどき一枚だけの薄い肌着をとり、自分のも下着を取ると女は軽く目をつぶり源氏の行動を待った。抵抗はあったが女の体は源氏を受け入れた。このような明石の君の意に添わない契りを無理に結んでしまったことに源氏は彼女を、いとしいという思いが心の中に芽生えた。彼女への情愛が契りを結んでますます思いが募るのであろう、淋しさを感じる秋の夜の長さが、今日はすぐに明けてしまった気持ちがする、「人に知られまい」と、気がせかれて、夜が明けない暗い内に心をこめた言葉を明石の君に残して、自分の館に返っていった。
 後朝のお手紙、仕来り通りに朝早くこっそりと今日は送った。源氏は京への聞えを憚るのである、紫の上など気にせずともよいのにつまらない良心の呵責であることよ。入道も娘と源氏が契りあったことを何とか世間に知られないようにと隠して、源氏の使者を普通は結婚第一夜の後朝の文の使いは盛大にもてなすしきたりであったが、大ぴらにもてなさない。明石の君はそんな源氏や父入道の行為が不満であった。
 この後源氏は時々こっそりと明石の君の許へ通っていった。源氏は「ここから彼女の館までは少し距離があるので、自然と口の軽い漁師の子どもが自分を見るかも知れない」と通うのをためらってしばたく途絶えることがあるのを彼女は、「やはり思っていたとおり私を旅の遊びに思っている」と悲しんでいるので、娘の親も「本当に二人の仲はどうなることやら」と、入道も気にしていた極楽往生の願いも忘れて、ただ源氏が通ってくることを待つばかりであった。ここにいたって入道達の心を乱すのも、大変気の毒なことである。

 今回明石の君と体の関係が出来て夫人にしたことを源氏はもし二条院に残している紫の上が、風の便りにでも聞くようなことがあっては、「冗談にもせよ、私が隠し事をしたのだと、私の行動を汚く思って遠ざけてしまう、申し訳なく恥ずかしいことだ」と思うのは源氏が紫を愛する心が強いというものであろう。「紫も私を愛する気持ちが深いので、嫉妬心が強く穏和な気持ちを持っているとは思えない、気にして恨まれることであろう。京にいる時もどうしてつまらない女遊びをして、紫に辛い思いをさせたのだろう」などと、昔を今に取り戻したく、明石の君と交わり興奮も治まると源氏は、目の前にいる女のことより京にいる紫を恋しく思う気持ちが湧いてきてどうしようもないので、別れて帰っていつもより手紙を心こめて書く、
 「ところで、近頃私は自分ながら心にもない浮気で、貴女に恨まれた時々のことを、思い出し胸を痛めておりますのに、またしても、変なつまらない夢を見たのです。このように貴女に語る言葉に隠しだてしない私の胸の中だけはご理解ください。『忘れじと誓ひし事を過たず三笠の山の神もことわれ』」
 などと書いて、

 しほしほとまづぞ泣かるるかりそめの
     みるめは海人のすさびなれども
(何事につけても、あなたのことが思い出されて、さめざめと泣けてしまいます、かりそめの恋は海人のわたしの遊び事ですけれども」
 と、貰った紫は返事を認める、それは源氏の文の内容にまったく何のこだわりもなくかわいら文章で、
 「隠しきれずに打ち明けてくださった貴方の夢のお話に、思い当たることが多くございますが、

 うらなくも思ひけるかな契りしを
     松より波は越えじものぞと
(固い約束をしましたので、何の疑いもなく信じておりました末の松山のように、心変わりはないものと)

 文は鷹揚な文面であるが、恨みごとはほのめかして書かれてあるのを、源氏はとてもしみじみと見ていて下に置くこともできず何回も読んで、その後は、暫くは明石の君へ忍びの通いはしなかった。