私の読む「源氏物語」- 11-
尽きもせぬ心の闇に暮るるかな
雲居に人を見るにつけても
(尽きない恋の思いと、親としての子を思う心とで何も見えない、はるか高い地位につかれる貴女を仰ぎ見るにつけても)
と、つい独言が口をついて出て、全て周りが切なく思われた。
皇子は、成長するに従って、とても見分がつかないほどに源氏に似てくるのを、皇后の藤壺は、まこと辛い気分であるのが、気付く人はいないらしい。なるほど、どのように作り変えたならば、この皇子に負けないくらいの方がこの世に生まれるだろうか。月と太陽が似通って光り輝いているように、世人も思っていた。 (紅葉賀終わり)
作品名:私の読む「源氏物語」- 11- 作家名:陽高慈雨