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みゅーずりん仮名
みゅーずりん仮名
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『 MOKUROMI-KYO ~目論見教4(続き)~』

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調査結果については、証言を得ることが出来たのは約50人ほどであったが、私は彼女たちにある共通点があることに気付いた。それは皆、転職活動をした者に限られるという共通点であり、また、当てはまらない場合には、趣味サークルに入っているか、習い事をしていた。つまり、親族以外の誰かしらとの接触が、妊娠を呼ぶわけだが、それも道理にかなっているように思えた。だが、ある産婦人科医の息子の話によると、特に身に覚えがない妊娠というものも多いらしく、多くは想像妊娠であるとして精神科を紹介することになっているという。妊娠を訴える女性達は、下腹部の膨らみと吐き気、貧血症状などを挙げ、妊娠結果が陰性と出ると何度も調べ直して欲しいと食い下がる、鬱陶しい人々であるらしい。私が直接得た証言では、妊娠検査薬を使用しても陰性反応が出続けるため、メタボリック症候群であると自己判断し、ダイエットに励んだところ妊娠徴候と思い込むような徴候は起こりにくくなったという。同じ頃、ある感染症が都会で発生したというニュースが流れた。出血や貧血症状などが感染症の徴候であったとのことで、それとの関連もあった様だが、あまり身近ではない出来事に関しては事実の記載のみにしておくことにする。

しかし、さらに震撼するべきことに、姪が警察に捉まった。彼女は頑として誰の名も口にせず、ただ私の名を出したとの話で、私は彼女を引き取ることになった。理由は分からなかったが、以前の面影が僅かに残るだけで、やせ細り憔悴しきった様子だった。私が昔所属していた集団と何か関係があるのではないかと尋ねたが、警察は裸足で夜道を歩いていたために補導した、という聞いたことのある理由を私に告げ、浅黒い顔を更に影で黒くしていた。姪の名は春実といい、体力を取り戻すに連れて、以前の様に快活になっていったが、何か不幸な事件に巻き込まれた様なことを軽い口調で私に告げたきり、事情について私が深く追求することは許されなかった。調査については協力的であったため、心当たりがあるのではないかと推測したが、春実の雰囲気から、それまでの他人への調査がややデリカシーに欠けるものだったのではないかと、その時に初めて思った次第である。どうやら警察沙汰になり、犯罪者としてのレッテルを貼られた者が役に立つのではないか、という都合の良い解釈の元に叔父としての私が認められたようであった。

私は非常に心配し、彼女の世話を数日間しただけで同居人を得ることに成功し、それが目論見教が初の教徒を得た瞬間でもあった。この様に説明すると、私に棚からぼた餅が転がり込んだ幸運のように思えるかも知れないが、姪が外からの侵入者として私の名を挙げたために、犯罪者の叔父が生まれた訳であり、運命論者からすれば至極当然の成り行きであったのかも知れなかった。


女性の協力者を得ると、調査は順調に進むようになり、数々の証言を得ることが出来るようになった。すぐにでも出版社にでも持ち込もうと考えたが、春実は調査結果を公表することを控えるように、と私に告げた。誰かに知れてしまうとこの先の活動ばかりか生活も命も危なくなるというのだった。だが、私にとっては、それはもう過ぎたこととして認識されていたために、油断があったらしい。ある日、春実の忠告通りに慎重にしておけば良かったと思える事態が生じた。部屋が何者かによって荒らされたのである。侵入者は、侵入した跡を隠そうともせず、泥の足跡を残し、壁には謎の赤黒い1cm大の染みが出来ていた。戦いは終結しても、未だに私を恨む者は跡を絶たないことに苛立ちを覚え、床の汚れをタオルで拭き取った。壁の染みは強めの洗剤を付けても消えず、日が経つに連れて黒く変色していったが、それは血の警告のようにも思え、私は天を仰ぐことも多くなった。しかし、神は存在せず、私を追い詰める者だけが姿無き侵入者として存在しているかの様であった。

春実に侵入者のあったことを告げることは、彼女がこの家を出て行くことであるので、私は全てを胸の内に納めることにしたが、不幸中の幸いとして、資料は手元に残っていた。尤も、以前の苦い経験から、資料のコピーを取る等し盗難に備えていた訳だが、極めてプライベートな事柄であるために公表してよい事実など何も無いことに気付いたのも其の頃のことである。新聞や週刊誌が取り上げない事実は無いとされているが、ごく一部の特例を除いてであろうことは推測に難くない。もしかすると、タブーとされている超常現象と呼ばれる現象の一つなのではないか。そのことについての意見を春実に求めると、目を丸くし首を振ったが、数日後に思い当たる節が幾つかあると言い出した。それには私も驚いたが、表情に出さずに聞き出す方法があるかどうかが勝負であると緊張し、春実が話し出すまで待つことにした。華籐の時と同じように、ある日突然、蒸発してしまうのではないかと気に病み始めた頃、彼女は当時の状況を語り出した。それは、いつものような陽気な口調ではなく、ぽつりと呟く言葉を並べただけの会話とは言えない会話であった。

姪の話をまとめると、このようなことが起こったらしい。まず、数ヶ月毎に下腹が膨らむという妊娠の徴候が起こり、つわりのような吐き気と生唾が頻繁に起こるようになる。しかし、妊娠検査薬では常に陰性と出、一度も妊娠判定は出たことがないという。身に覚えのない時期にも起こる徴候であったため、産婦人科へ掛かろうかとも考えたが、もしも妊娠である場合には一体どうしたらよいのか。堕胎手術を受けるつもりもなく生きており、妊娠したならば出産を考えていたが、父親も不明であるならば受診は必要ない。また、陽性反応が出ていないということは勘違いとして処理されるという可能性もあり、その様な恥をかくためだけに受診はしたくなかった。かといって、警察へ届け出るというのも、事が起こらずして取り乱した女として処理されるのではないかと考えたということだった。不審なことに、部屋の窓の鍵が、夜は閉めておいたにも関わらず朝になると逆回転して開いていたという。その時には、妊娠徴候の替わりに酷い頭痛があったと言い、その他には喉の痛み等あったため、首に絞められた痕が無いか確かめたが、特に見た目から被害が読み取れることは一度もなかったということであった。

私は、その様なことがあったのならば何故、警察に届け出なかったのかと訊いたが、納得の行く答えは得られなかった。口調がやや詰問に近かったせいだと思われる。警察に逮捕されるという事実により、被害は全て打ち消され、もう何を言っても被害者としては扱われないことが悔しいと言って、姪は泣いていた。しかし、重要な証言を得た。下腹が膨らんだその痕に起こる現象として、就寝中に体が半回転した翌朝には、体全体が細く軽くなっていたというのである。それに関しては、デリケートな話題から少し逸れた話であるので、他にも証言を得ることが出来る可能性があると判断し、調査は終了した。あとは、それを公表へ持っていくのではなく、必ず正しい復讐のために、使ってやるのだと私は決心した。