SF小説「AKARI」 第一話
カプセルの中から離脱したAKARIの意識と装置の通信システムが繋がる。
「AKARI ! 聞こえるか?GEORGEだ!」
「ええ、聞こえるわよ。はっきりと聞こえる。素晴らしいわ!目の前は太古の世界よ。見たことも無い樹木がたくさん繁っている」
「そうか、成功したな。GREAT だ!」
「これで恐竜と会えたら最高ね」
「ああ、でもたとえ意識体とはいえ、やつらに食べられでもしたらどういうトラブルになるか不安だから、絶対に接触しないように注意してくれ」
「解かったわ。そうする。自分で場所の移動が出来ないから恐竜が現われたらどうすればいいの?」
「座標はこちらで動かせるから、とりあえず地上100メートルほどに設定しておくよ。動くものがはっきりと見えたら近づけるようにするから言ってくれ」
「OK ! そうして。安心だわ」
人類の長い歴史の中で、時間を逆行したことは、たとえ夢を見ているような意識領域とはいえ、どんなアクシデントが待ち構えているか予測不可能であった。
「GEORGE ! 何か見える。高度を下げて!」
「了解。50メートルにする」
ゆっくりとのっしりと歩いている草食恐竜がAKARIの視界に入ってきた。
「すごい!10メートル以上ある体の大きさだわ。映像パネルで見るのとは大違いよ。言葉に表わせないわ・・・」
「そうか!おれが見れないことが残念だよ。次は自分で行きたいから、戻ってきたら交替しようぜ」
「そうね、戻れたらね」
「何言ってるんだい!戻れるに決まっているだろう」
「じゃあ、戻して。安全が確認出来たから、次はあなたが行けばいいよ」
「OK ! じゃあ、カウンターをリセットして戻すから待っていてくれ」
そう告げたあと、主装置の異常を知らせる警告ランプが点滅し、やがて動力であるプラズマ融合炉の出力がダウンし始めた。
「どうしたんだ!なにが起こったんだ!」
GEORGEがそう叫んでいる間に、出力レベルはどんどん低下し、メインスイッチが切れてしまいそうな気配になってきた。
作品名:SF小説「AKARI」 第一話 作家名:てっしゅう