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昼下がり、陽の光が何かとのどかな村に眠気を誘う。
周囲を森に囲まれているアベントロートは、どうしようもないぐらい田舎である。
なにせ、錬金術師がいないどころか薬屋一つない。
何処か体の調子が悪くなったら、何日に一度の行商人が来るまでは
ただ耐えるしかない。　ここでは年老いた百姓が腰を痛めただけでも大事なのだ。

そんな農村に、かの有名な錬金術士協会お墨付きの錬金術師が
やって来た、という知らせはあっという間に村中に広がった。
しかも『ほぼ』唯一の若者であり、『錬金術師のタマゴ』であり、
村の希望をいつのまにか背負っていたティカが
若い男を連れてきた、ともなればアベントロートは半ばお祭り騒ぎだ。

婆さんやら小母さんやら、はたまた嫁の移り気が気になるのか
いい歳をした爺さんや小父さんも、その窓から家の様子を窺っていた。