小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

生と性(改稿版)

INDEX|1ページ/28ページ|

次のページ
 
 その日、高田恵美は桜並木の坂を上っていた。桜の花はとうに散り、青々とした若葉が初々しかった。恵美はやや早足で坂を上っていく。桜の葉の間から漏れる太陽の光が眩しかった。桜並木の両側は閑静な住宅街である。どの家も敷地が広い。それなりに裕福な家庭が多いのだろう。恵美は横に走る路地に入ると、立派な門構えの家の前で立ち止まった。
「ここが新藤さんの家ね……」
 恵美は門を潜り、玄関の呼び鈴を鳴らした。それは上品な音で響いた。
「はい、どちら様ですか?」
 中年女性と思われる、品のよい声がインターホン越しに聞こえる。
「高田恵美です。鈴木さんからご紹介いただきました……」
「ああ、はいはい。今、開けますね」
 恵美を迎えてくれたのは、清楚で品の良さそうなマダムだった。このマダムが今日の恵美の客、新藤尚樹の母だ。恵美は会釈し、「よろしくお願いします」と言った。
「あらあら、よろしくお願いするのはこちらよ」
 尚樹の母はにこやかに笑い、恵美を家の中へと迎え入れてくれた。
「随分とご立派なお宅ですね」
 居間に通された恵美は、天井からぶら下がるシャンデリアを眺めて言った。
「主人が会社の役員をしていますの……」
 尚樹の母が紅茶を淹れて、恵美に勧める。アールグレイの香りがまた上品だった。
「同じ帰帆養護学校を卒業した鈴木さんに、高田さんの噂を聞きましてね。私も悩んだんだけど……。高田さんに尚樹のこと、お願いしようかと思って……」
「尚樹さんは今、お部屋ですか?」
「ええ、ここのところ、あまり外には出してないの。先日、路上で見ず知らずの女性に抱きついちゃったのよ」
「そうでしたか……」
 恵美が同情するように言った。
「尚樹さんは自閉症でしたよね?」
「ええ……。もちろん知的にも遅れがあって、療育手帳のA1を所持しています」
 療育手帳のA1を所持しているということは、尚樹は最重度の知的障害者ということになる。
「突然、私が部屋に入っていっても大丈夫ですか?」
「ごく簡単な会話くらいはできますの。まあ、オウム返しも多いんですけど……」
「そうですか。こだわりは?」
「それは強いですわ。尚樹の部屋に行けばわかると思いますけど、物を置く位置が少しでも違うとパニックになりますの」
 尚樹の母は笑って言うが、おそらくそれを受け入れるまで相当な苦労をしているはずだと恵美は推測する。
「身体を触られることに対して抵抗は?」
「それはないです。尚樹は十八にもなるのに、今でも私とお風呂に入っているんですよ」
 尚樹の母が苦笑を漏らした。その笑いの裏側には数々の苦労があったのだろうと恵美は推測した。
「では早速、尚樹さんの部屋に案内してもらえますか?」
 アールグレイを飲み干した恵美が立ち上がった。

 尚樹の部屋は二階にあった。母親は「尚樹、お姉さんが来たよ」と言って、部屋の扉を開ける。
 部屋の中は意外にも乱雑だった。それでも母親が言うには、尚樹なりに物を置く位置が決まっているのだと言う。親が買い与えたのだろうか、ベッドの上には男性誌が数冊見受けられた。
「尚樹さん、よろしく。高田恵美です」
 恵美は尚樹に握手を求めた。だが、尚樹は握手の意味がわからないらしい。ただ「尚樹さん、よろしく」とオウム返しの返答を返しただけだった。
「じゃあ、お母さん、後は二人で……」
「何かあったら、すぐ声を掛けて頂戴」
 そう言って、尚樹の母親は部屋から出ていった。
「尚樹さん」
 恵美はそう尚樹に声を掛けるが、尚樹は「尚樹さん」とオウム返しに答えるだけだ。
 恵美はベッドの上に置かれた男性誌をパラパラと捲った。そこには女性のヌードばかりか、男女が結合している写真も掲載されていた。恵美がその雑誌を捲っていると、尚樹は「おっ、おっ」と言って、ジャージとブリーフを一気にずり下ろし、ペニスを露出させる。そして弄ぶようにペニスを擦り始めたのだ。
 知的障害を有する者の中には包茎も多い。尚樹も例に漏れず、亀頭は露出していなかった。そこは包皮に覆われていたのである。
「雑誌より、こっちの方がいいわよ」
 そう言うと、恵美は服を脱ぎ始めた。ブラウスを脱ぎ、シャツを脱ぐ。上半身はブラジャーだけになった。恵美は惜しげもなく、ブラジャーのホックを外す。すると、それほど大振りではないが、形のよい乳房が露になった。
 そんな恵美を見て、尚樹は「エッチ、エッチ」と喚いた。そして一層、ペニスを扱く手を加速させる。
 恵美はスカートに手を掛ける。ホックを外すと、スカートははらりと落ちた。そしてストッキングを脱ぐ。恵美はパンティ一枚だ。
 そんな恵美の姿を見て、尚樹が恵美に手を伸ばしてきた。恵美は拒否をしない。尚樹の掌は形のよい乳房に伸びていた。それは愛撫というには、あまりに稚拙ではあったが、荒々しい雄の仕草だった。
 恵美はパンティに手を掛ける。やはり、惜しげもなくそれを脱ぎ捨てる。パンティは小さく丸まって、ベッドの上にふわっと落ちた。
 尚樹がそれを拾った。鼻に押し当て、臭いをかぐ。そんな直樹の仕草を見て、恵美は思わず微笑を漏らした。
 尚樹のペニスは既に硬く、痛々しいほどに勃起していた。それでも亀頭を覆う包皮は剥けていない。その先端から少し粘膜質の亀頭が顔を覗かせていた。恵美は尚樹のペニスに指を添えると、そっと包皮を剥き始めた。だが、尚樹は「嫌なの、嫌なの」と喚き、恵美の行為を拒否した。どうやら、尚樹は包皮を剥かれることに抵抗を示すようだ。恵美は仕方なく、包皮を元に戻した。
 尚樹は恵美が来る前、母親とシャワーを浴びているはずだった。であるからして、ペニスに恥垢が溜まっているようなことはなかったのである。
 勃起しても包皮の剥けないペニス。恵美は今までどれほど、そのようなペニスをみてきただろうか。そしてほとんどの者が、包皮を剥かれることに抵抗を示す。それも恵美にとっては想定していたことの範囲内のことだった。
 包茎だからといって、性交ができないわけではなかった。恵美はバッグからコンドームを取り出すと、尚樹のペニスに被せた。そしてローションを塗る。
「さあ、尚樹さん、横になって」
 そう言っても通じる相手ではなかった。尚樹は意思疎通が困難な重度の自閉症なのだ。
 恵美はそっと、添い寝をするように尚樹を寝そべらせた。そして、その柔らかくしなやかな指で、そっとペニスを擦ってやる。
「おう、おう、おう」
 尚樹が奇声を発しながら喘ぐ。ペニスは十分な硬さだった。恵美はその硬さを確認すると、おもむろに起き上がった。そして、尚樹の上に跨る。
「いい、挿れるわよ……」
 そう言っても、尚樹には恵美の言葉が理解できない。
 恵美は尚樹のペニスを指で支えたまま、腰を沈めていく。ローションのお陰で前戯がなくても恵美は尚樹を呑み込むことができた。ヌプヌプという肉を掻き分ける感触が広がる。
「ああっ……!」
 恵美も喘いだ。自分の女の中枢を男が突き上げる。だが悲しいかな、尚樹は腰を動かし、自ら快楽を得ることを学習していない。今まではマスターベーションに頼っていた尚樹である。
 恵美は前後に腰を動かし始めた。結合部からヌチャヌチャという音が漏れた。
「うひぃ!」
作品名:生と性(改稿版) 作家名:栗原 峰幸