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靴ベラジカ
靴ベラジカ
novelistID. 55040
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Wie geht's ―はじめまして

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火のない焚き火の燃え滓が遊びまわっている中、
ふくろうの鳴き声が身体に染みる。
家に帰ろうにも、もうティカにそれほどの余裕は残っていない。
燻製を作るために想像以上の時間と体力を費やしてしまったようだ。

最近はずっと勉強づくめで、肩の力を抜く暇は無い。
でも久々に体を使うのは楽しかった。
 「送ってく。 俺もアベントロートにしばらくいるから」

男は燻製と抱えた荷物に埋もれそうだが、彼女を背負いゆっくりと歩き出す。

身を委ねさせてくれる相手がいる。 こんなのいつ以来だろう。
広い背中。 温もりはティカの思考をまどろみに誘っていく。

 「名前… なんていうの」
うつらうつらでどうにか、せめて、ちいさく尋ねる。

この人はしばらく村にいるのだから。
今日の出会いは気のふれてそうなのでも、きっと明日はいい出会いになる。

 「…イェレミアス」
―イェレミアス・シンジェロルツ。 略して、『レミー』だよ。

今日は眠ってしまおう。
あいさつは少しぐらい後でも、きっと大丈夫。

はじめまして。 また明日。

これから3年を共に生きる、その仲間に抱えられて、
ティカの長い一日は終わった。