お酒のお話 2
進学したばかりの大学では必修科目の講義が山のように待ち構えていたし、
免許をとるために自動車学校にも通い始めたばかりの頃だったから、
この上さらに勉強を強いられる事になるのかと思っていた。
思っていたのだが、結果的にそうはならなかった。
ハマってしまったのだ。
もともと凝り性なところもあって、お酒の世界にのめり込んだ。
強いられるどころか、自ら本を読んで勉強した。
とても熱心にと言うわけではなかったにしても、
酒屋で働く上で必要な知識としては十分なものを身につけられたし、
酒に関するうんちくなどは飲み会の席ではちょっと評判がよかった。
今ならあの時の一見さんの気持ちも少しわかる気がする。
そしてお酒の勉強をすすめればすすめるほど、
お酒が好きになる自分がいた。
歴史背景や技術についてももちろんだが、
飲んだことの無いお酒のテイスティング・ノートを読んで、
未知の味を頭の中で思い浮かべるのは至福の時と言えた。
飲まなくても、お酒は楽しめるのだ。
倉庫のような店内に、
自分が飲んだことの無い美酒がたくさんあるのだと思うと、
興奮すらしたものだった。