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銚子旅行記 銚子からあのひとへ 第二部

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 辺りには住宅も多いが、駅前には雑居ビルも目立つ。そんな複々線区間の駅を通過し、練馬駅に到達。この駅は、池袋線と西武豊島線、西武有楽町線が出入りしているジャンクション駅。さらに、通過用の線路もあるから巨大だ。そこを通り過ぎると、線路は複線になる。隣の桜台駅を過ぎると地上に下りる。あのひとのいない旅路の中でも、特に朝焼けが綺麗に見える区間はこれでおしまい。
 この先の江古田駅の近くには、中退した大学がある。江古田は僕が学生時代を過ごした街だ。駅はその当時の面影がおよそ見出せないぐらいに変わってしまった。しかし、その駅から一歩でも出ると、学生時代の面影がしっかりと残った街がある。最近、そんな江古田で飲む機会が何度かあった。そのついでに街を歩いたり、学生に紛れて大学のキャンパスを歩いたり。もちろん、中には変わってしまったものもあった。しばらく来ない間に思い出の店が店じまいしていたり、新しくできた店があったり。言葉にできぬ懐かしさの中に、〝時の流れ〟を感じた。
 思い出深い街を過ぎ、隣の東長崎駅を過ぎると、沿線には古い建物が建ち並んでいる。それらの壁や線路沿いの塀などには、スプレー塗料による落書きが散見される。何となくだけれど、〝アンダーグラウンド〟という言葉が似合う風景だ。その風景は、次の椎名町駅を過ぎるまで続く。その区間が終わり、池袋の高層ビル群が見えてくる頃、列車のスピードも少しずつ下がってくる。山手線などの線路を跨ぎ、特急むさし六十二号は池袋駅にたどり着いた。
 この駅の特急列車乗り場の改札口が新しくなったと聞いている。今までは出入り口が別だったけれど、どうやらそれらが統合されたようだ。新しい改札口へ向かって歩いていると、乗り場に初代〝レッドアロー〟が止まっているような錯覚に陥った。
 初代は西武線から引退後、一部が富山地方鉄道に払い下げられた。今でもその地で、西武時代とほぼ変わらない姿で走っている。来年の三月には北陸新幹線が開業し、富山がグッと近くなる。その時には、初代と再会しに富山へ行こうと思っている。
〈あのひとと富山にも行けたら嬉しいな〉
 懐かしい色の電車を眺め、そんな取り留めもないことを考えながら、改札口を通って駅前へ向かった。

 すっかり明るくなった池袋の街。ここは僕が社会人生活をスタートさせた街だ。折からの体調不良を悪化させて、結局、半年ぐらいで何もできないうちに去ってしまった。悔いばかりが残る街でもある。
 タバコの吸える喫茶店でアイスティーを飲みながらタバコ休憩をして、次へ向かう。池袋駅からは、東京メトロ丸ノ内線で東京駅へ向かう。この方が山手線で行くより早くて楽に東京駅へ行ける。
 丸ノ内線は短い6両編成。こんな朝早くでも、少しばかり混んでいる。何とか空席を見つけて座った頃には、列車も発車時刻となって動き出していた。
 発車と同時に車内に流れた案内放送。その声は、営団地下鉄から東京メトロに変わったと同時に変更されたもの。もう10年も前の話だけれど、その声がかわいいと少しだけ話題になったことがあった。僕もその声を聞きたさに、用もないのに東京メトロに乗ったものだった。もう聞きなれたので、東京メトロも用がない限り乗らなくなったけれど。
 丸ノ内線は古い路線だからか、副都心線のような新しい路線と違って地上から浅い所を走っているようだ。茗荷谷駅に着くと、地上に出る。その先には、〝中野検車区小石川分室〟という長々しい名前の丸ノ内線のねぐらがある。横を通ると、銀色の車体に赤い帯の電車が次の運用に向けて体を休めているのが見えた。時々、法定検査などの都合で銀座線の電車が来ていることもあるけれど、今はその姿もなかった。
 茗荷谷駅を出てからトンネルに入り、それを出ると、もうすぐで後楽園駅。後楽園ゆうえんちの遊戯物や、東京ドームが見える。今はプロ野球もシーズンオフなので、レプリカユニフォームを着たり、観戦グッズを持ったりしている人はいない。それも何だか寂しい話。早く年が明けて、2015年シーズンが開幕して欲しい。
 ここしばらくは、東京ドームもこうして丸ノ内線の車内から見るだけ。最後にそこへ野球観戦に行ったのは、いつのことだか思い出せないぐらい昔の話だ。今年の3月に西武ドームで知り合ったカープ仲間がいる。その方とは、よく神宮球場での観戦をした。来シーズンは、東京ドームでも観戦しようと約束している。その時が今から楽しみだ。
 後楽園駅を出てから、またトンネル。地下鉄だから当たり前か。それでも、その先の御茶ノ水駅を出て、神田川を渡る所でまた地上に出る。ここで丸ノ内線の線路を中央線の線路が跨ぐ形になっている。ここの風景を写真に撮っている人も多い。さらに、この風景を鉄道模型のNゲージで忠実に再現した人もいるから驚きだ。
 御茶ノ水駅の辺りで地上に出るのは神田川を渡る辺りだけ。またトンネルの中を走り続けて、東京駅に到着。ここまで全ての駅で進行方向左側のドアが開いていた。ここで初めて進行方向右側のドアが開く。何となく、これから乗る特急列車に間に合うかどうか少し不安になった。しかし、何のことはない。十分に間に合うようだった。
 丸ノ内線を利用して東京駅へ来るメリットは、これから乗る総武線乗り場や、その前に切符を買うみどりの窓口まですぐに行けることもある。山手線乗り場からだと、少しそれらが離れている。丸ノ内線乗り場の改札口を出て、コンコースをわずかばかり歩くと、JR線の改札口が現れた。


第五章 いざ、銚子へ

 列車に乗る前に、みどりの窓口で切符を買う。成東駅から銚子駅までの切符と東京駅から銚子駅までの自由席特急券をそれぞれ往復分、さらに、成東駅までがエリアの〝休日おでかけパス〟というフリー切符を券売機で買う。東京駅から銚子駅までの切符を買うより、この買い方をした方が合計で千円ぐらい安く旅ができる。〝休日おでかけパス〟は、切符売り場の券売機でしか買えない切符だと思っていたので、まとめて買えて手間が省けた。切符を買った時、ついでにある人への〝お土産〟として領収証ももらっておいた。ちなみに、〝休日おでかけパス〟は2670円、成東駅と銚子駅の間は1520円、東京駅と銚子駅の間の自由席特急券は1340円だ。
 改札口の近くの喫煙ルームで一服して、その向かいにあるニューデイズに入る。数ある商品の中から列車の中で飲むお茶や缶チューハイなどを買い、改札口へ。〝休日おでかけパス〟を自動改札機に通し、乗り場へ向かって歩いて行く。
 そう言えば、別な改札口にある電光掲示板に、列車の運行情報が出ていたことを思い出した。どうやら人身事故のため、横須賀線が運転見合わせをしているらしい。最初にそれを見た時は、特に関係ないと思った。しかし、よく考えると、これから乗る総武快速線は横須賀線と直通運転をしている。果たしてこれから乗る列車は、まともに走るだろうか。