小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
竹田 しおり
竹田 しおり
novelistID. 54867
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

黒太子エドワード2

INDEX|8ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

一七章 ジェノヴァ船


「父上、フランスがまたしてもジェノヴァ船を出してきたとか……。私が行っても宜しゅうございますか?」
 一三四六年九月四日からイングランド軍によりカレーの包囲は始まっており、イングランド本土とフランドルの両方から補給を受ける状態が続いていた。
 対するフランスのフィリップ六世は、その補給路を何度か断とうとして失敗していた。
 だが、イングランド側もジェノヴァ船によるフランスへの補給を遮断出来ずにいた。
 そんな最中の黒太子エドワードの発言であった。
「よい。春になれば、航路のより安定し、物資の補給も今より出来よう。お前は、それまでに職人達の町をきちんと作っておけるよう、監督せよ!」
 だが、父が息子に命じたのは、そんなことであった。
 血気にはやる気持ちのまま、動かすのは危険だと、自らの経験をもとにして、思ってのことだったのかもしれない。
 しかし、若い黒太子は不満だった。
「ですが、父上!」
 そう食い下がる息子を手で制し、エドワード三世は言った。
「待て! そう血気にはやるな! それに、知っておるか? もうじき臨月だそうだぞ」
 すると、黒太子は苦笑した。
「又、ですか? お盛んですね、父上も」
 その言葉に、エドワード三世はムッとした表情になった。
「何を申しておる! 私が言っているのは、ジョアンのことだぞ! ケント伯の姉の」
 その名を聞いた途端、黒太子の顔色が変わった。
「そうですか……。私には、関係の無いことです……」
 小さ目の声でそう言い、むこうを向く黒太子に、父はため息をついた。
「まだ忘れられんのか? お前も王太子になり、初陣とて無事に勤めあげたのだ。そろそろ結婚してもよかろう?」
「では、この戦がひと段落したら、考えましょう」
「長期戦になると分かって、申しておるな?」
 エドワード三世が苦笑しながらそう言うと、黒太子は父を見た。
「ジェノヴァ船の対策に行かせて頂けますか?」
「それは、ならんと先程から申しておろう!」
 エドワード三世はそう言うと、ため息をついた。

 先ほどから黒太子が何度も口にしている「ジェノヴァ」は「ジェノヴァ共和国」のことであった。海運業で栄えた都市の「ジェノヴァ」を中心に、一〇〇五年から一七九七年まで存在した、都市領邦のことであった。
 中心都市のジェノヴァは、現在もイタリア北西部にあり、リゲーリア州の州都でもあり、ジェノヴァ県の県都でもある大都市である。
 黒太子エドワードの頃は、キオス島を中心とした北エーゲ海、クリミア半島南部沿岸、コルシカ島周辺の三カ所の都市群から主に構成されていたが、黒海における通商特権を持っていたのは、ジェノヴァとピサだけであった。
 フィリップ六世率いるフランス軍を補給していたのは、そういう海運都市であったので、海で危なくなったら逃げるルートにも精通している上に反撃も出来た。正に、手ごわい相手であったのである。

「確かに、町造りも大事ですが、今はまず、相手の補給を断つことが最優先ではありませんか?」
「それはそうだが、あやつもじきに参るしな……」
 そう言うと、エドワード三世はため息をついた。