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紡ぎ詩Ⅱ(stock)~MEGUMI AZUMA~

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 人間の一生には様々な出来事がある。平々凡々とした私のような人間でもそれなりに山あり谷ありの毎日で、これまで歩いてきた道を振り返れば、それなりに色々とあった。もちろん、嬉しいことも哀しいことも取り混ぜてだ。
 少し前、日記代わりのブログには、こんなことを書いた。
―今年一年を振り返った時、小さな後悔はたくさんあるけれど、大きな後悔は一つもない。そのことが良かったと思う。
 考えてみれば、これまで私が歩いてきた道程もそんなようなものだと思う。
 人は平然と他人を裏切る。もちろん、そんな人ばかりというわけではないが、現実に、そういう人は意外と多いものだ。しかも、身近にいて信頼している人の中にいたりする。「何で、この人が」と信じられない想いと絶望の入り交じった気持ちを味わったことも幾度となくあった。逆に、あまり信頼できないと思い込んでいた人が予期せぬ誠意を見せてくれて、涙が出るほど嬉しかったこともある。
 物事にせよ、人にせよ、見かけだけで判断はできないとつくづく思うゆえんだ。何か辛い出来事があった時、それを自分を成長させるための試練か、ただ哀しい残念なことと嘆くだけか。受け止め方次第で、その人の未来は随分と違ってくることだろう。
 ただ、自分が他人を裏切るよりは、まだ裏切られて泣く方が良い。私はそう思っている。世の中というものは自分の行いの報いは予期も悪きもすべて自分に返ってくる。色々な出来事も、できるなら常にポジティブで「試練」と受け止めてゆきたい。
 それでも、人生という道、晴れる日よりは雨の日が多いなぁと弱気になってしまう。だが、雨の日には、道ばたの木の下で雨宿りがてらひと休みして、雨が止んだらまた歩き出せば良いかなと気楽に考える。
 晴れ間まで望めなくても、雨が止めばまた歩き出せるのだから。



☆『春を呼ぶ桜餅』

ドライブで立ち寄ったコンビニで偶然、桜もちを見つけた

レジの前で、二個だけ残って並んでいた薄紅色のそれは

まるで ひっそりと雪解けを待つ小さな雪兎のように見えた

何故 春を象徴する桜もちが雪でこしらえたウサギに見えたのかは判らない

けれど 桜もちがたくさん入っていたのであろうその箱に

二つだけ残ったそれらは ひどく寂しげに見えた

私は元々 甘いものも和菓子も好きだからということもあって

ついついコーヒーと一緒に桜もち一個を買うことになった

動き出した車の中で熱い淹れたの珈琲と桜もちをほおばってみる

砂糖なしのミルクだけの珈琲と桜もちのクセのない甘さが絶妙のバランスだ

ピンクのミニうさぎの上に塩漬けの桜花が乗っている

うーん 春だなあ

ひと口だけ囓った桜もちを顔に近づけて しげしげと眺めてみる

やっぱり ピンク色の小さなうさぎに似ている

どうも食べ辛くなってしまったが 

このままというわけにもゆかない

車窓の外を流れる景色も確実に日ごとに春に向けてうつろってゆく

鉛色だった冬の海は少しずつあたたかさを滲ませた薄青い春の色に

弱々しかった陽差しは少しずつ力強さを感じさせる春の陽差しへと

もうひと口だけ囓ったら 今度は はっきりと「春」の味がした

窓の外の海沿いの桜たちが満開の花をつけるまで

あと少し

ゆっくりと近付く春の足おとに耳を傾けながら

また桜もちを食べる

私の瞼の中で 

満開の桜の下をピンク色のうさぎが元気よく飛び跳ねていった


☆『心の海』

海沿いの道を走った
真っすぐにひたすら前に向いて伸びるひと筋の道は
どこか人生にも似ていて
私の心を切なくさせる
鈍色の雲が幾重にも重なった空は低く垂れ込め
暗く濁った海を押しつぶしそうなほど迫っている
時折 海面を掠めていた小さな雨滴は止んだが
海の表面は相変わらず白い尖った波が立ち
あちこちで小さな渦が逆巻いている

人の心が海に似ていると思ったのは いつだったか
あるときは穏やかな陽光に燦めき 楽しげに波が撥ね踊るのに
あるときは不気味な灰色に染まり 獲物を今にも呑み込もうとする恐ろしい魔物になる
もしかしたら 海が様変わりするのではなく
私の心を海が映し出すのかもしれない

人生という道を歩きながら
私は傍らに臨む海に何を見るのか
海はそこに何を映し出すのか
現実の海は春近しといえども 空の色をそのまま映し出して暗く染まり荒れている


二月の早春の海は今日 荒れていた


☆『春の足おと』

浅い微睡みの底に響くひそやかな音
あれは何?
今でも早春の夜明けにふっと耳奥に甦るあの懐かしい音

そう あれは今から気の遠くなるような昔
四月のある朝 18歳の私は最寄りの駅から京都に向けて旅立った
車窓を流れる風景を追いながらも
私の見つめていたのは窓越しの光景ではなく
自分の前にひろがる果てしない未来だった

かすかな期待とそれを上回るほどの不安を手荷物よりもどっさりと抱えて
私は故郷を旅立ったのだ
あれから何十年経った今も この時期になると必ず耳に響く車輪の音
電車が線路をふるわせ 走ってくる音は
私に人生初めての旅立ちを思い出させる

たとえ希望よりは不安が多かったとしても
間違いなく あれは私に春を運んでくる使者であり 春のあしおとだった
ピィーとまだ薄青さが漂う夜明け前の大気をつんざくように汽笛が鳴る
故郷を旅立つ間際の18歳の私は寝覚めの夢に
幾度となく幻の汽笛を聞いた
今も春が近づけば聞こえてくるあの車輪の音が
また新たな春のおとずれを私に告げている 


『春の足おと』

浅い微睡みの底に響くひそやかな音
あれは何?
今でも早春の夜明けにふっと耳奥に甦るあの懐かしい音

そう あれは今から気の遠くなるような昔
四月のある朝 18歳の私は最寄りの駅から京都に向けて旅立った
車窓を流れる風景を追いながらも
私の見つめていたのは窓越しの光景ではなく
自分の前にひろがる果てしない未来だった

かすかな期待とそれを上回るほどの不安を手荷物よりもどっさりと抱えて
私は故郷を旅立ったのだ
あれから何十年経った今も この時期になると必ず耳に響く車輪の音
電車が線路をふるわせ 走ってくる音は
私に人生初めての旅立ちを思い出させる

たとえ希望よりは不安が多かったとしても
間違いなく あれは私に春を運んでくる使者であり 春のあしおとだった
ピィーとまだ薄青さが漂う夜明け前の大気をつんざくように汽笛が鳴る
故郷を旅立つ間際の18歳の私は寝覚めの夢に
幾度となく幻の汽笛を聞いた
今も春が近づけば聞こえてくるあの車輪の音が
また新たな春のおとずれを私に告げている 


☆『ららら。。。~小学校最後の制服~』

まんなかのおねえちゃんから おさがりがとどいた
いつ かったせいふくだろうか
わがやでは おんなのこのせいふくは ひとりにつき にかいかう
いっちゃくめはにゅうがくしたてのとき
にちゃくめは ちゅうがくねんになって  ていがくねんのときのものが
きられなくなったとき
すかーともおなじだ

このせいふくは おおきいおねえちゃんのときにかったものかな
それとも まんなかのおねえちゃんのときにかったものだろうか