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サーキュレイト〜二人の空気の中で〜第九話

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 オレがそんなようなことを口にすると、我に返ったかのようにはっとなり、老人は答えてくれた。


 「……ああ、確かに。地図と黒陽石に直接関係は無い。それを得ようとするかどうかは、君の自由だがな」

 そう言った時の、老人の瞳は、打って変わっていろいろな感情がない交ぜになっている感じだった。
一番感じ取れるのは苦しみ、だろうか。
 まるで、逃げられない何かに追われているかのような感じを受ける。

「分かりました、とにかく、その地図を探してみます」

 それでも、オレは無難な答えを返した。
 それが良かったのかどうかは解らないが、老人は一つ頷いて言葉を続ける。

 「それから……例のバスの者達だが、もし彼らに会ったなら、近付かぬ方がいい。彼らは罪からあぶれようとあがく者達。関わってよいことはないだろうな」

 老人が重々しくそう言った時。


「「黒陽石〜っ、黒陽石〜っ」」

 テンションの高い、二重の掛け声が聴こえたかと思うと、今度は逆方向へそのまま走っていってしまう二人が見える。
 完全にオレを置いていく勢いだった。

 「ちょ、まっ……あ、すいません、もう行きます」

 二人が力を合わせ、調子に乗ると厄介だ。
 ……じゃなくて、早く追いかけないと。
 こんなところで一人は洒落にならないって!

 二人の暴走? に、焦ってついていこうとして、しかしオレは、肩口に声をかけられる。


 「……君、名前は!」

 それは……なんというか、期待を含んだ声色だった。
 ちょっとだけ、送り出してくれたじいちゃんを思い出してしまう。

「永輪、永輪雄太です! それじゃあ、いろいろとどうもありがとうございました!」

 オレは振り返り、頭を下げると、急いで二人を追いかけて行く。


「……永輪、か。果たして偶然か。それとも」

 だから、そんな老人の呟きは、オレに届くことは無かったのだった……。


             (第10話につづく)