正常な世界にて
ふと横を見ると、伊藤が深刻そうな表情を浮かべていた。額には冷や汗が浮かんでいる。私の話しぶりから不安を感じたのかもしれないけど、不安がさらに強まってくる。
彼の話だと、高山さんの組織は弱体化していて、心配しなくて大丈夫な相手なはずだ。組織の勧誘を断って正解だったと笑っていたじゃないか……。
「あなた達には、特別支援隊と部下二人を殺した報いを受けてもらわなきゃいけない。……心苦しさはあるけど皆殺しね」
想定外じゃないものの、不穏極まりない単語が飛び出してきた……。
皆殺し。ミナゴロシ。語呂合わせだと37564。
「わ、私たち全員を殺すってこと!?」
私は焦り、当たり前な質問を投げかける。
「……うん、つまりはそういう事。残念だよ。本当に残念だと思ってる」
「そんなそんなそんな!!」
唾を飛ばし、酷く狼狽える私。坂本君がいたら、きっと空気を読まずに噴き出しているはずだ。
「それじゃあ、さようなら。……森村さんと坂本は一緒に埋めてあげるね」
高山さんはそう言うと、電話を切ってきた。通話終了を告げる無粋な電子音が、とんでもない大音量で鳴り響いてくる……。