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正常な世界にて

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 六月六日の朝。
 梅雨前線が南へ下がったおかげで、朝から久しぶりの晴天だった。私は先日から引き続き、抵抗することについて悩んでいたところだ。
『本日の正午、総理大臣による臨時の会見が開かれます。極めて重要な会見となりますので、必ずご視聴ください』
朝のニュースで、キャスターが言った。いつも通りの淡々とした口調でだ。しかし、「極めて重要な」という言い方は初めてだった。よほど大事な発表があるんだろうね……。
 キャスターが言った数分後、ラインに通知が届いた。クラスのライングループからの通知だ。クラスのほぼ全員が、このグループに入っていて、連絡網代わりにもなっている。
『学校からの連絡で、今日は臨時休校になりました』
ただそう書かれていた……。送信者はなんと、高山さんだった。学級委員長でもない彼女が、こういう大事な用件の送信者となることは、今回が初めてではない。なので、このメッセージは冗談ではなく、本当のことなんだろう。
 急に学校が休みなったので、無邪気な坂本君は喜んでいるようだ。なにせライングループに、楽し気なスタンプを連投するぐらいだからね……。彼はちゃんと、正午の放送を観るのかな?
 良くも悪くも真面目な私は、自室で苦手な物理の復習をすることにした。ややこしい物理の公式を学んでいれば、時間はすぐに過ぎ去るだろうね。

「はい、森村です。はい……はい……」
どうやら、父も今日は休みになったらしい。休日出勤もさせるような会社なのに、これは珍しいね。ひょっとすると、今日は日本中の学校や会社が休みになったのかもしれない。
 これはもしかすると、いわゆる「リセット」の関係かもしれない……。高山さんに聞くのも手だけど、違ったら恥ずかしい。新しい経済政策の発表とかだったら、赤面ものだ。



 ――正午前になると、私はリビングへ急いで戻ってきた。すでに、テレビはついている。チャンネルはさっきのままだ。今は天気予報が流れている。今日は一日晴れらしい。
「お昼できたから手伝って」
母にそう言われ、私は配膳の手伝いをする。今年初めてのそうめんだ。私は氷水が入った大きな器を、ダイニングテーブルへ運ぶ。

 正午になったのは、いただきますを言ってすぐのことだ。テレビには、首相官邸の記者会見場が映し出されている。会見台の横には、日本国旗が置かれていた。
 数秒後、会見台に総理大臣が現れた。いつもよりも真剣な表情だ。気のせいか、横にいる手話の人もそんな感じがする。
 これはやっぱり、もしかすると……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん