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正常な世界にて

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 到着した警察車両は、パトカーだけじゃなくて、青と白のラインが引かれた警察バスや、上にホースノズルを付けた装甲トラックもやってきた。警察の広報イベントにしか登場しないような車だ。私の予想以上に、派手な騒ぎになってきた。バスから、物々しい格好をした警官隊が降りてくる。彼らは、盾と警棒を構えていた。

「解散しなさい! 今すぐ解散しなさい!」
デモ隊に向けて、警告が鳴り響く。だけど、デモ行進は止まらない。

 ブシューーー!

 装甲トラックのホースノズルから、強力な放水が開始された。火事現場のニュース報道で映る放水と大差ない感じだ。
 燃えたつ炎を消す程の水が、デモ隊に命中する。放水を喰らった人は、強力な水圧に耐えられず転倒した。一人倒れると連鎖して倒れていく。放水によって、デモ行進の動きが止まった。放水に押しやられる感じでね。放水は人々の叫びも消せるらしい。

 デモ隊は、放水を浴びながら、散り散りバラバラに逃げていく。放水の水溜まりで転ぶ人もいた。今は春だけど、ずぶ濡れになるのは気持ちいいものじゃない。痛そうな水圧だしね。
 逃げるデモ隊を、警官隊が追いかけ、警棒で殴りつける。警官が殴られたので、その仕返しもあるんだろう。デモ隊は殴られたり、警官に取り押さえられたりして、勢いを一気に消沈させる。
 ひとまずこれで、この場は警察によって抑えられたわけだ。私の周囲にいた野次馬たちは、一悶着が終わると次第にその場を去っていく。門限があるし、私もそろそろ帰らないとね。

 帰りの地下鉄でスマホを使い、先ほどのデモと鎮圧について、さっそく調べてみた。ツイッターにはもう、デモ隊や警官隊の写真がこれでもかという具合に流れていた。うまく撮れている写真は、高スコアのリツイート数を弾き出している。つい羨ましくなるね。
『人権侵害な暴動!』
『警察、暴動を見事鎮圧!』
『暴動の参加者、全員拘束!』
メディアの反応を調べてみると、どこもデモ隊を非難する反応だった。デモ隊の主張を載せている所はどこにも無く、デモを「暴動」だと断じている。デモ隊は全員、公務執行妨害などで逮捕されたらしい。
 そして、どのメディアも再発防止策を、つまり同じようなデモを起こさせないよう、世間や政治家に訴えている。しかし、主張する具体策はどれも、逆に人権を制限してしまうものだった……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん