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正常な世界にて

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「廃品回収のところに入れといて」
母は私に封筒を突き返した。私は仕方なくそれを、古新聞や古雑誌を入れている紙袋の中に突っ込む。
『ウェクスラーIQ検査が、全国民に法律で義務化される事になりました。故意に試験を受けなかった場合は、罰金刑が課せられるとの事です。』
封筒を片づけ終わり、リビングへ戻ったちょうどその時に、そのニュースがテレビで流れていた。
「……嫌だねぇ」
母は当然嫌そうな表情で、母はテレビを観ている。先ほどよりもさらに嫌そうだ。まあ、『義務』という言葉からは、いい印象を感じ取れないけどね。
「さっきのチラシ、持ってこようか?」
「そうしてくれる? ホントに無料だといいんだけど」
チラシの『無料』という言葉を、ケチな母は見逃さなかったらしい……。


 夜十時頃に父が帰宅した。いつも通りお疲れだ。
「フロ」
今日は先に風呂か。昨日は先に夕食だった。
「コレ、お前が受けたテストか?」
カバンから取り出したチラシを、私に渡す父。チラシには『ウェクスラーIQ検査を受けよう! 無料検査実施中!』とデカデカと書いてある。このチラシもわざわざ『無料』の文字が強調してあった。無料広告に釣られる人のIQがどういうものなのかは、興味あるね。
「うん、そうだよ。パパも受けてみたら?」
「やっぱりか。スマホのニュースで知ったけど、どうせ義務化されるなら、今のうちに受けたほうがいいな。義務化されるとなったら、足元を見て、無料じゃなくなるかもしれない」
「そうそう、無料のうちにね」
さっきのチラシを手にした母もそう言った。どうやら、両親のIQを見れば、無料広告に釣られる人のそれがわかるらしいね……。



 部屋に戻った私は、ベッドで寝転がりつつ、スマホで例のIQ検査について調べることにした。ニュースサイトで詳細を把握し、ツイッターで世間の反応を知るのだ。
 よく調べてみると、検査と併せて、採血や通院の措置もありうるらしい。テレビニュースは時間の節約のため、細かい情報まで報じないとは聞いたことがあるので、今回もそれが原因なのかも……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん