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正常な世界にて

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【第16章】



 私たちは、高山邸のダイニングルームへ通された。天井が高く広々としたそこがクリスマスパーティ会場で、もうじき始められるところ。
 廊下やキッチンでは、ケータリングサービスの人々が準備にてんやわんやしている。ドアを開ければ、大忙しの喧騒や料理の芳香が、ドッと流れこむだろう。
 部屋は高校の教室ほど広く、厳かに鎮座する高級家具やアンティーク雑貨が、場を堂々たる雰囲気に盛り立てていた。ランプの暖かな光は、高い壁から圧迫感を打ち消し、待つ私たちに安心感を与えてくれる。
「遊園地のお城みたい!」
「ヤバい。金遣いがヤバい部屋だな」
クラスメートたちは感嘆の表情を浮かべつつ、語彙力に乏しい感想を、無邪気に披露する。
 しかし、高山さんの素性を知る私からすれば、これも演出の一つにしか思えない。今必死に浮かべる笑みは、場に合わせるためだ。

 席順で一悶着ありながらも、クラス全員が席につける。私と坂本君は隣り合わせだ。一番奥の目立つ上席は、高山さん専用で、そこだけポツンと空けられている。
 ダイニングルーム中央の長方形のテーブルは、クラス全員が席につけるほど大きく立派で、歴史を感じさせる物。長い年月を生きた大木から削り出された一品だろう。素人目にもその雄大さを感じられる。
 これほど高級なダイニングテーブルは、どれぐらいの値段がするのかな? 少なくとも、我が家のアレが十台は楽々買える値段のはず。高山さんに尋ねればわかるけど、野暮だし自重しよう。
 ケータリングサービスのスタッフが、クリスマスパーティを彩る料理の数々を、次々運んでくる。メニュー自体は一般的なクリスマスのそれ。フライドチキンやポテトフライといったお馴染みのジャンクフードに、ドレッシングまみれの生野菜サラダとか。
 ……だけどそれは、私の浅はかな先入観だとすぐに知る。
 プロらしい盛り付け方や美麗な食器のおかげもあるとはいえ、高級感とポップ感の両方を醸し出しているほどの高いクオリティだった。同じ名前の食べ物が、街中に溢れている事が信じられなくなる……。あと、会費は平凡な価格設定だったから、なおさら信じられない。
 見た目や匂いが食欲を奮起させ、テーブルのあちらこちらで、つまみ食いが横行してしまう。坂本君なんて、すでに全種類をつまみ食い済み……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん