小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

正常な世界にて

INDEX|1ページ/381ページ|

次のページ
 

【第1章】



 ああ、また同じような失敗をしてしまった。これでちょうど十回目……。

「まあまあ! 森村さん!!」
目の前にいる中年女性が、私に怒っている……。
 この女性は、数学の先生だ。そして、彼女に怒られる私は、生徒というわけ。先月入学したばかりの女子高校生だ。教室中の人間の視線が、私や先生に集中している。

 第一志望だった共学の県立高校でJKデビューを果たせた私、森村比奈は苦難に襲われている……。大袈裟に言ってるわけじゃない。
 同じ失敗を何度も何度もやってしまう。私が今怒られている理由がそれ。ちなみに今回の場合は、教科書間違いだ。数学?の教科書ではなく数学Aのを持ってきてしまった……。
「なぜ、授業が始まってすぐ言わなかったんですか? もう半分以上の授業時間が過ぎているんですよ?」
ネチネチと責めてくる先生。更年期障害でも起こしているのだろうか?
「気がつかなかったので」
性悪そうな先生には、余計な言い訳をしないほうが無難だけど、我慢できずに口走ってしまった……。これも苦難だ。
「……気がつかなかった? 授業をちゃんと聞いていれば、すぐ気づけたはずですよ?」
ごもっともな話だ。実はつい先ほどまで、上の空に陥っていたのだった……。馬耳東風なのだから、気がつかなかったのは当たり前だ。集中力が保てないのも苦難だった……。
「もうあなたは高校生なんですよ? いつまでも子供でいられないんですからね?」
イライラしてくる私。ババアの説教を聞くのが好きなヤツなんて、ごく僅かの少数派に違いない……。

「先生! 授業に戻ってください! 見せますので!」
大きな声が教室に響き渡る。とても澄んだ口調だ。
 声の主は、すぐ隣りの女子だった。彼女は、モデルのような美しい外見の持ち主だ。私とは大違いだけど、不思議なことに嫉妬心は湧かない。
「あら、ごめんなさいね。……森村さん、高山さんに教科書を見せてもらいなさい」
助け舟を出してくれた彼女の名前は、高山奈菜という。私とは明らかに違う人間だ。家柄も全然違うはず。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん