小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

お母さんとの電話。~バプテスマって…。~

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
お母さんから聞いていた話では、
“年に数回バプテスマを受ける事が出来るイベントのようなものがあるの。頭まで水に浸かるんだけど、水の入れ物は小さなプールのようなのがあったり、お風呂の浴槽みたいなのもあったり…。手助けしてくれる人が水の中に入ってて、浸かって水から出る時にその人が起き上がらせてくれるの。その時に目が開くんだって。昔はヨハネという人がヨハネのバプテスマをしてたんだけど、今は水のバプテスマになったの。”
という感じだった。
バプテスマを受けると何がどう変わるのか…。
それをお母さんに聞いてみたところ、
“神について証すものになれるし、復活はあるし、永遠の命はあるし…。良いことばっかりあるわよ。”
と言うくらいだった。
ちゃんとした証拠というかもっと納得の行く答えが欲しかった。

お母さんが何度も何度も言うので、バプテスマについてちょっと聖書とネットで調べてみた。
宗教のおばちゃんからは、“ネットを見ないでください。”と言われていたけど、やっぱりすぐに知りたいので調べた。

おばちゃんは私に対して強制したのだろうかと考えてしまう。
でも、“人には自由が与えられている”とおばちゃんは言うので、その状況は矛盾しているんじゃないかとも考えてしまう。
おばちゃんに聞いてみたこともある。
『おばちゃんはネットを見ないでくださいと言いますが、神は人に自由を与えたので、私がネットを見るのは自由なんじゃないんですか?!“見ないでください”って言うと強制になってしまうので、神が与えた自由に反してしまうと思うんです。間違ってますか?!』
と言った。
おばちゃんは聞きながら目を見開いて行き、肯きながら、
『そうです、そうです。その通りです。神は人に自由意志を与えたのですね。あなたはよく勉強していらっしゃるんですね。そこに気付いたのはとても素晴らしいことだと思いますよ。しかしですね、やっぱりネットで調べるのはいけません。ネットには私たちのことを間違って書いていたりするので、あなたは勉強を始めたばかりなので、どの内容が正しいのか正しくないのかと判断する力はありませんから、やっぱりネットを見てはいけませんね。もしネットを見たいのであれば、私たちの宗教のホームページがありますのでそこを見ると良いと思いますよ。あなたの知りたい答えがそこにはあると思いますから。それでも分からなければ、私に聞いてください。分からないことは何でもお答えしますからね。』
と言われた。
これは結局私の自由なのか自由ではないのか…考える。
宗教のホームページの中なら、どんなに見ても私にとっての自由かもしれないけど、おばちゃんは見て良い範囲を私に対して決めているようにも感じたので、それだったら強制となるのではないかとも思う。
そんなことをふと思い出した。

そして結局は、おばちゃんの言い付けを守ることなく、私は聖書とネットとおばちゃんたちのホームページも見て調べた。
言い付けを守らなかったという部分を取れば私はおばちゃんに対しては反してしまったのだろう。
しかし神の与えた自由に対しては反さなかったような気がする。


そのことをお母さんとの電話で伝えることにした。

『バプテスマについてなんだけど、もう一回聞くけど、水に浸かって受けるんだよね?!』
と私は聞いた。
お母さんは誇らしげに、
『そう!!そうよ。水に浸かると全て拭い去られるの。どう?!あなたも受けたくなったの?!』
と話を無駄に広げてきた。
『はぁ~?!違うよ!!バプテスマについて調べてみたの。だからその前にもう一回聞いてみただけ。』
と私はお母さんのペースに乗せられないように気を付けた。
『ネットと聖書で簡単に調べたけど、“水のバプテスマ”なんて言葉なかったよ。』
と私は単刀直入に伝えた。
案の定お母さんは受話器の向こうで固まった。
まっ、フリーズ状態。
なので私はもう一度ゆっくりとお母さんの脳みそに言葉を届けた。
それでも反応がないので、
『もしもし…。』
と言って待ったら、
『…はい…。』
と返事が来た。

私はお母さんのしていることに対して、間違った行いをしているのだろうかとも思う。
信じてお母さんは宗教の勉強をしている。
そして宗教の信者になりたいのだろう…。
でも私は同じ宗教の勉強をしてはいるけども、この世の中の事実を教えてくれるとか私の疑問の全てに答えてくれると聞いていたので、その答えを知るために勉強をしているのだ。
目的は違う。
これはお母さんの自由を奪っているのだろうか…。
しかし私は事実と事実の話をしたいのだ。
事実と空想やら想像やらのなんとなくの事実か分からない話をしたいわけじゃないのだ。
架空ではなく事実を知りたいだけなのだ。
この気持ちは間違っているのだろうか…。
お母さんにこれを押し付けているのだろうかとも考える。
バプテスマの意味が分からなくて調べただけの事で、そのことをお母さんに伝えただけのことだ。
そのだけのことと自分では言うけど、相手に向けたのなら“だけのこと”にはならないのか…。
だからなのか、お母さんがこんなにも固まるなんて…と思う。

お母さんは小さな声で返事をするだけで、それ以上のコメントを言わない。
しばらくして、やっとこさお母さんが話しだした。
『えっ?!水のバプテスマがない?!どういうこと?!お母さんは何回もイベントで見てきたけど…。』
と言った。
『簡単に調べただけだけど、その言葉は見つからなかった。“水”と“バプテスマ”はあったけど、合体して“水のバプテスマ”はなかった。』
と説明したら、
『お母さん何回もその言葉見てるよ。本当にそのホームページは本物?!お母さんは何回もその言葉を読んでるから、間違いはない。今回はあなたの方が間違ってると思うよ。』
と言った。
それを聞いて私は今回はお母さんの方が正しいかも…と思ってしまった。
その時は、一旦この話は止めた。

そしてまた調べてみた。
今度は、聖書の索引から調べた。
いろんな角度からも調べていたら上から、
“ここを読んでみると良いですよ。”
とか、
“そこの部分は関係ないかなぁ~。”
とか、
“もう少し先まで読むと良いですよ。”
とか…、なんとな~く優しく導いてくれる優しさが届いては読んでを繰り返した。
そして自分なりの答えに行き着いたので、お母さんに電話した。

『やっぱり水のバプテスマなんて言葉はないと思う。キリストが受けたバプテスマは、その時に神様がいるっていうことを伝えるためで、ヨハネがしてたバプテスマは、ヨハネがいる間だけ出来たバプテスマで、その後は、神様とキリストと聖霊がするみたい。』
と伝えたら、全く理解出来てないようで、
『はぁ~?!言ってる意味が全く分からない。どういうこと?!』
と言った。
『分からないけど、全部調べきれてはないけど、分かる範囲で言うと“水のバプテスマ”は聖書には書いてない…。』
と私が言うと、お母さんが何か閃いたのか思い出したのか、
『ちょっと待って。聖書見てみるから…。』
と言うのでしばし待った。
その間私もまた見間違いじゃないかと聖書を見返した。
お母さんの独り言らしき言葉が聖書をめくる音と一緒に聞こえてきた。