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機巧仕掛塔ラステアカノンのトルティーネ

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スメラギノマガタマ〜Sacred tresures


 絹のようになめらかな風がさらり吹く。
 細い葉がしゃらしゃらと震え、まるで天界が奏でる妙音を届けているようでした。
 青々とした竹林が広がり、荘厳な静けさが辺りを包んでいます。
 規則正しく枝葉を踏む音が、心地よく響いてきました。
「ここ変な木ばっかだよ〜」
「ああ、確か竹・・・バンブーとか言うらしい」
 トルティーネが首を回らせ、周囲に程よい間隔を開けて生える竹を見渡します。
 地面から時おり顔を覗かせている三角の形をした茶色いものをとことこ避けながら、うっさんが記憶の中の図鑑を開きました。
「たけーばんぶ〜?ばんぶーぶーぶー」
「ぴぃぴ?ぴぃぴびーびーびー」
 情緒の欠片もなく、トルティーネはぴぃを頭に乗せておもちゃの兵隊よろしく行進を始めます。大手を振って引き連れるのは、うさぎといぬのお供のようです。
 ふと、最後尾を行くいぬが足を止めて、そのあまり動かない首で見上げたのは一本の竹でした。
 周りの笹の葉がさわめいている中、そのだけが全く微動だにしていません。
「どうした?何かあったか?」
「ふぇ〜?って、何かそれ光ってる〜?」
 うっさんの声にトルティーネも振り返ると、淡い光が漏れていることに気付きました。
「光ってるな」
「光ってるね〜。竹って光る木なの〜?」
「いや、そんな記憶は・・・だが、そうなのか?」
 トルティーネは腰を屈めて竹を覗きこみ、うっさんは真剣に記憶を辿り始めます。そんな中、
「ぶるぶるぶる・・・」
「ぴぃぴ!」
「あ、いぬのしっぽがー。これ“パーツ”〜?」
「そうなのか?この竹が?だが、一体どうすれば・・・」
「ぴぃ、穴開けてみる?」
“パーツ”のようだと判明したものの、このトルティーネ達の身長を優に越える大きさの前に、どうしていいかわかりません。
 しかし、あーでもないこーでもないと手を焼いている内に、その時がやってきました。
「あれ、何か・・・」
 しなり、ぐにゃり。あれ程動かなかった竹が、まるで胎動するように震え始めます。思わず後ずさったトルティーネ達の目の前で途中からポッキリと勝手に割れ、近くの竹にもたれ掛かるように横倒しになりました。
「あれ、ぁあ〜?」
「な、何だ、これは?」
 トルティーネ達が覗いた、節で綺麗に割れた裂け目の中から出てきたのは、─────片手に収まる短剣でした。
「シャベル?」
「いや先が丸くないぞ」
 躊躇うことなくそれを掴み取ったトルティーネの、手の中にぴったりの大きさです。
柄はありますが刃のないそれを、一見で短剣と判断するにはトルティーネ達にとっては馴染みのないものでした。
「何だろうね〜。とりあえず持っとこうかー」
「そうだな。“パーツ”なら、早いところ<炉>にくべてしまおう。扉を探すか」
「だね〜」
 すんなり同意したトルティーネと一行はまた歩き出します。
 乾いた土を踏み締め、心地よい音を弾ませながら竹林を進みます。しかし、行けども行けども広がるのは同じ風景ばかりです。
「「・・・・・」」
 いつまで歩けばいいのか。終わりが見えず、みんなの表情が曇り始めました。やがて痺れを切らしたトルティーネがその場に座り込む寸前。
「─────行き止まり、か?」
 うっさんの声に項垂れた首を巡らせます。
 ざわめく竹林の先には、もう見飽きてしまった緑以外の色が覗いていました。
 途端差し込んだ希望の光に、体力と気力を総動員して駆け付けたそれは、蔦の張った岩壁でした。高さはトルティーネの身長の三倍程。左右横一線に延々と続いています。
 うっさんが辺りを隈無く調べていると、その事に気付きました。
「扉はない、か。・・・ん?・・風が吹いているな。奥に続いているのかもしれん」
 見つけた隙間に近付くと、風がひゅるひゅる通る音を上げて顔にぶつかります。けれど奥に何があるのかは、蔦が生い茂っていてよく見えませんでした。
 うっさんは少し考え込んだ後、振り向きざまトルティーネの手元に目を止めます。
「そうか、トルティ。それで蔦を斬ってみるか」
「あ、これ〜?おっけー」
「ぴっぴー」
 さっき見つけた短剣を指差され、トルティーネは今まさに曲がるか試そうとしていたその手を、ぴぃは繰り出そうとしていた一撃を止めました。
「えぃやあー」
 青々とした新緑の葉が幾重にも重なるそこへ、トルティーネが適当に振り上げた短剣は思いの外切れ味が良く、一気に蔦を斬ることが出来ました。
「わぁ、よく切れ・・・ってぇ?」
 面白そうに、もう一度振り上げたトルティーネの手が止まります。
 蔦で固定されていたのでしょうか。
 いくつもの蔓がたわんだかと思うと、重々しい震動と共に、岩がスライドするように動き出します。地響きに辺りの林が連動しざわめき始めました。
 突然のことに仰け反ったトルティーネ達の前に、ぽっかりと顔を覗かせたのは大きな口を開けた洞窟でした。
「ふぇ〜?」
「どういうことだ・・・?」
「ぴー・・・」
 呆然となるひとりと二匹の前には、どこまで続いているかわからない暗闇が伸びています。
 流石のトルティーネも不用意に足を踏み入れることはありませんでしたが、それはただ反応が追い付いていないだけのようでした。
 うっさんが固唾を呑みゴツゴツした岩肌をまじまじと見ていると、
「─────?!」