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機巧仕掛塔ラステアカノンのトルティーネ

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「・・・大丈夫か?!怪我はないか?!」
「くぅーん・・・」
 真っ先に動いたのはうっさんといぬでした。
 小柄な体で全力疾走しながら、────地面に体が埋まってしまったトルティーネ達に叫びます。
 ばこっ。
 その声に反応して身動ぎをしたトルティーネは、腰から下は土中に、身体はくの時に曲がり、大地に平伏すような格好でした。
「う、ぶ、・・・う〜ん、だいじょぶだいじょぶ〜」
「ぴふー・・・」
 地べたにはまった顔を外して、口の中に入った土くれや草に顔をしかめつつ、トルティーネはへらへらと笑います。頭を押さえていた腕の中からは、ひょっこりと溜め息をついたぴぃが顔を出しました。
 はまったー!、と両手を芝生に置いて頑張って抜け出そうとするトルティーネですが上手くいかず、土竜のようにも見えます。
「無事そうでよかった・・・!」
「うーん、ぴぃのお陰だねぇ」
 爆発に煽られるよりもダメージが大きかった気もしますが、何にせよふたりは大丈夫でした。
 引っ張ったり穴をほったり、うっさんやいぬの力を借りて、なんとかトルティーネは穴から這い出すことが出来ました。残ったのは、落とし穴と上半身の魚拓のような跡形です。
「みんな酷い有り様だな・・・」
 円になったみんなを見回しながら、うっさんがそう溢すのは無理もありませんでした。全員が身体中土まみれの、毛があればボサボサの満身創痍です。トルティーネに至っては衣服の所々が擦りきれている箇所さえありました。
 ぴぃといぬは毛繕いを始め、うっさんもブリキの表面を払い始める中、ただひとりだけがそんなことは気にも止めずに、別のものに興味を示していました。
「あ、破片だぁ〜」
“太陽”の残骸でしょうか。至るところに地面を穿った大きな石や小さな破片が散らばっていました。
 トルティーネはしゃがみ込んでその中の一つに手に伸ばし、掴み取ります
「────ん?え?」
 そして何かを言われたように顔を上げると、そこにはいつの間に昇っていたのか、四つの星が夜空高く瞬いていました。まるで新しい太陽のような輝きを放ち、この天球空を照らしています。
「震えてる〜」
 トルティーネは掌の中の煤けた金色の石に視線を戻します。縦に筋の走る断面は光を反射して、何かを主張するように煌めいています。トルティーネはしばしそれを見つめて、珍しく考え込むように停止しました。
「よし、わかったよぅ!じゃあこれはこうするのが一番だねえ〜」
 そう言うや否や助走をつけて駆け出し、腕を思いきり振りかぶります。
「とうりゃぁああああ〜!」
 うっさんと、いぬとぴぃが、何事かと着いていけず見送る目の前で。
 トルティーネはその“太陽”の破片を、目一杯の力を込めて中空に向かって投球しました。それは大きな弧を描いて、あの四つの星を目掛けて飛んでいきます。
「・・・ふぅ。ふへへ、いつもいぬの為にいっぱい投げてるからねぇ〜こん位ちょろいちょろいー」
 流星にかわった破片を見送りながら、トルティーネは楽しそうにぐるぐると腕を回します。
 最後、挨拶をするようにきらりと光った点に、大きく両手を振って応えました。
「で、トルティ。“パーツ”を投げて見失って、どうする気だ?」
「え、え〜?どうもしないよ〜?めでたしめでたし〜」
 音もなく近づいてきたうっさんの声音には、抑揚はありません。
 そんなことは気にもせず、満面の笑みで振り返ったトルティーネのおでこに、
「────あだーっ」
「めでたい、わけ、あるかーーッ!今直ぐ!探して、こんかーー!」
「え、えぇ〜?何で〜?」
 飛び上がったうっさんの、振り下ろした手刀の角がめり込みます。
 いきなり目の前に散った火花に、トルティーネはびっくりして口をあんぐりと開けてよろめきました。
「何でだと?!お前は自分の役目がわかってないのかあー!」
「わかってないのはうっさんだよぅ!」
「意味不明なことを言うなあ!」
 うっさんのお冠は宇宙の遥か果てまで届くようでした。
 痛むおでこを押さえながら、トルティーネが取る行動は一つです。
「もぅ良いよーうっさんのわからずや〜!」
「待てトルティ!また逃げるなあああ!」
 駆けていくトルティーネの後ろを、目を吊り上げたうっさんが追いかけ、やれやれといった風に羽ばたいたぴぃと、慌てたいぬも出発します。賑やかなマラソンが、この天球空で繰り広げられていきます。
 先頭を行くトルティーネは凸凹な地面を器用に走りながら、空を仰ぎ見ました。
「もう大丈夫〜、まだ貴女には“彼ら”がいるよ。────ほら聞こえてきたよ、ひとつめの星の唱が・・・」
 頭上に輝く四つの星と、今はまだ見えない太陽に向かって、もう一度手を振ったのでした。

<十字架の運命 宇宙結び 永久の命たれ 後に続けやコル・タウリ志して>