機巧仕掛塔ラステアカノンのトルティーネ
fairy×tale〜Tortine meets fairy!
──────女の子がいた。
見慣れたような見慣れないような服装の女の子。
その子は髪が短かった。あの子の髪は長かった。
あの子は帽子を被っていた。その子は杖を持っていた。
その子は、あの子は、あの子は、その子で、みんなみんな、○○○○なんだって。
ひとり、微笑んでいるような泣いているような表情でこっちを見てる子がいる。
ぼんやりとしたその輪郭が、少しずつ掠れていって薄れていってそして──────
「痛・・・っづぁあああああ〜!」
頭を粉砕するような衝撃に、トルティーネは飛び起きます。
あちこちに跳ねている髪の毛を逆立てながら。
今日も機巧仕掛塔ラステアカノンには、大絶叫が木霊しました。
「はぁあ〜ふわぁああー」
色褪せた紙で出来た蝶が二匹、花から花へと渡っていきます。
やわらかい光が降り注ぐ、のどかな陽気。
まったりと花壇に腰かけて、トルティーネはだらしなく口を開けてあくびをしました。今ぴぃが飛び込んだら、すっぽり入ってしまうくらい大きなものです。それは本日何度目になるのか、数えきれません。
見かねたうっさんが、しゃがみこんで観察していた野花から目を外しました。
「そんなに眠いのか?まさか“夜”に起きてるんじゃないだろうなあ?」
「ふぇ〜寝てるよ〜?でも何だかスゴい眠ひんらよね〜ふぅわあぁあ」
話している間にもまたあくびを放つトルティーネに、うっさんはいつものように呆れて嘆息する・・・かと思いきや、何も言わずにトルティーネを見つめます。
「あ〜眠いよぅ。お昼寝を〜しましょー」
ばたんと花壇の縁に寝そべり、トルティーネは腕をぷらぷらさせて“空”を仰ぎます。
木の実をくわえたぴぃがお腹の上に飛んできて、赤い果実を啄みはじめました。
「・・・トルティ、何か夢とか覚えているか?」
「ぇ〜?」
指先でぴぃの翼を撫でながら、トルティーネは少し考えてから答えます。
「何もみてないよ〜?」
「・・・・・」
その返事に今度はうっさんがしばらく考え込み始めました。
トルティーネは気にも止めずに、ぴぃをつついてつつかれて遊んでいます。風に運ばれていく花の香りに、自然と鼻歌も混じります。
「──────よし、トルティ。“パーツ”を探しにいくか」
おもむろにうっさんが立ち上がりました。
トルティーネは視線だけを動かして、向こうの可愛い花が沢山咲いている花畑の中で、蝶にじゃれつき尻尾をいっぱい振りながらジャンプしているいぬを見ます。
「そんなに眠いのか?まさか“夜”に起きてるんじゃないだろうなあ?」
「ふぇ〜寝てるよ〜?でも何だかスゴい眠ひんらよね〜ふぅわあぁあ」
話している間にもまたあくびを放つトルティーネに、うっさんはいつものように呆れて嘆息する・・・かと思いきや、何も言わずにトルティーネを見つめます。
「あ〜眠いよぅ。お昼寝を〜しましょー」
ばたんと花壇の縁に寝そべり、トルティーネは腕をぷらぷらさせて“空”を仰ぎます。
木の実をくわえたぴぃがお腹の上に飛んできて、赤い果実を啄みはじめました。
「・・・トルティ、何か夢とか覚えているか?」
「ぇ〜?」
指先でぴぃの翼を撫でながら、トルティーネは少し考えてから答えます。
「何もみてないよ〜?」
「・・・・・」
その返事に今度はうっさんがしばらく考え込み始めました。
トルティーネは気にも止めずに、ぴぃをつついてつつかれて遊んでいます。風に運ばれていく花の香りに、自然と鼻歌も混じります。
「──────よし、トルティ。“パーツ”を探しにいくか」
おもむろにうっさんが立ち上がりました。
トルティーネは視線だけを動かして、向こうの可愛い花が沢山咲いている花畑の中で、蝶にじゃれつき尻尾をいっぱい振りながらジャンプしているいぬを見ます。
「あ、あれ“パーツ”だよ〜。きっとそう」
「阿呆」
ぽかん、と頭を小突かれ項垂れます。
「今日は隅から隅まで探すぞ」
「え〜何でまたぁー?」
いつになくやる気に満ちている風なうっさんに、トルティーネはブーイングの嵐です。全身で反発するように、花壇に抱き付いて離れません。
「い、い、か、ら、早く行くぞ・・・!」
「い、や、だ、か、ら〜、早く離して〜…」
だってここスゴく天気良いよ〜、と泣きつく始末です。
しかしうっさんも諦めません。
トルティーネの服を引っ張ったり、つねったりくすぐったりと、あの手この手で花壇から引き剥がそうとします。
やがて根負けしたトルティーネが嫌々でも起き上がり、口を尖らせながら立ち上がったその直後、
「「──────?!」」
突然、稲妻のような衝撃が走りました。
地鳴りと共に、トルティーネの輪郭がブレました。
そのブレはまるで鼓動するように、拡大縮小を繰り返します。
それはトルティーネだけではありませんでした。
驚愕したうっさんも、いぬも、ぴぃも、蝶も、花も、草も、地面も、全て。何もかもが歪み、世界が濁った色に変わっていきます。
機巧仕掛塔ラステアカノン全体が狂ってしまったかのように、変容していきます。
そして次の瞬間、
──────ヴォン、と景色が切り替わるように震えたかと思うと、
「「・・・っ!」」
「「・・・・・・・・・」」
また何事もなかったかのように、元の風景に戻りました。まるで潰されたバネが元に戻る力が働いたように。
あるのは花が生き生きと咲いた、うららかな庭先です。
「「???」」
目を白黒させたトルティーネ達の中でいち早く反応出来たのは、うっさんでした。
「・・・い、一体何が・・っトルティーネ、みんな・・っ大丈夫か?!」
「・・・き、気持ち悪かったよぅ・・・」
「ぴ・・、ひ〜」
「く・・るきゅぅ・・」
地面に座り込み頭上にひよこを回しているトルティーネを、血相を変えたうっさんが支えます。ぴぃといぬは既に地面に崩れ落ちて、同じように目をぐるぐるさせていました。
うっさんが動揺を隠せず、頭を振り乱しながら周囲を見回しているとそこへ、
「っ!」
体ごと持っていかれてしまうような、激しい突風が吹き抜けました。うっさんは思わず顔を伏せて、トルティーネの袖にしがみつきます。
一陣の風は沢山の花片や草をさらい、どこか遠くへ運んでいきます。
そして代わりのように運んできたのは、
「□□□、□□・・・っ?!」
「△△、△△・・・?」
「☆☆☆☆☆☆☆、☆☆☆!☆☆☆☆☆・・・!」
それは、誰かの“喋り声”でした。
風の通り道を撫でるように、ふわりと降りてきたもの。
何を言っているかまでは聞き取れませんでしたが、それは確かに“声”でした。
「な・・・?!」
うっさんは弾かれたように頭を上げ、今度こそ言葉を失います。帽子を押さえたトルティーネの顔に、耳が当たりそうになった事に気付く余裕もありません。
しかし無理もありませんでした。
このラステアカノンの中で、──────する筈のない、トルティーネ達以外の“声”がしたのですから。
考えを巡らせるよりも早く、うっさんは声のしてきたであろう方向へ駆け出しました。
「あっ待っ・・・」
作品名:機巧仕掛塔ラステアカノンのトルティーネ 作家名:el ma Riu