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社会批評

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成熟と社会


 個人の意識のありようが変わっていくことで、法制度や社会制度は漸進的に変わっていく。もちろん専門的な領域などそうでないところもあるだろう。だが、基本的に、この生きられた社会にこそ、社会のルールを決める源泉があり、その生きられた社会の価値観は個人の意識のありように基づくのである。
 成熟とはなんであるか、様々な意見があるだろう。私は、個人の成熟を、(1)自己の人生を愛すること、(2)汲み尽くせない他者と誠実に応答すること、(3)社会を内面化し社会に参画すること、の三点でとらえたいと思う。すると、個人の成熟に対応する形で、成熟した社会像というものを描けるように思うのだ。
 まず、個人が自己の人生を愛するようになれば、自己が育った地元の町への郷土愛が当然生まれるだろう。これは、自然への愛や都市への愛も含んだうえで、育った町の固有性に対する愛着を抱くことである。そうすれば、地方の産業が活発でないとか、地方が過疎化しているとか、そういう問題を解決するためにも、地元に残ったり、地元を支援したりというローカリズムが穏当に発達するように思われる。
 次に、個人が他者という無限に汲み尽くせない存在と誠実に応答するようになれば、まず差別は起こりにくくなる。他者とはそもそも完全に理解できないものであることを了承していれば、理解できない他者をそのものとして受け入れることになり、他者を排除することは少ないだろう。ここに、社会の多様性を許容する素地が出来上がる。性格の多様性、ジェンダーの多様性、民族の多様性などを許容する社会になっていくように思われる。
 さらに、個人が社会を内面化し社会に参画するようになれば、社会に対する無関心は減り、逆に社会権力に過度にしがみつく人も減るだろう。公と私、その両方において個人は主体的に活動し、公的な領域に参加すると同時に自己実現も果たしていくという理想的な人生が可能になり、社会もまた個人を十分尊重したうえで活発化するであろう。
 今、成熟を拒む若者が増えているという。だが、個人が十分成熟すれば、社会において、現在有識者が唱えている、ローカリズムやグローバリズム・多様性、私を活かしながら公も活かすこと、そういう意識が生きられた社会の中の共通意識として醸成されていき、やがて法制度や社会制度を変えていくはずである。成熟した社会へと。

作品名:社会批評 作家名:Beamte