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月とコンビニ
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猪熊「はぁ…始業式から本当に気分悪い。休み時間の度に話しかけてきて…全部シカトしたけど。危うく友達になるところだった…」
●ツバキ・信之介、入り
ツバキ「猪熊さんですよね?」
猪熊「はい?」
信之介「ちょっと、いいですか?」
ツバキ「初めまして。猪熊さん」
猪熊「誰?」
ツバキ「私の名前はツバキ。よろしくね。」
信之介「信之介です。よろしく」
猪熊「私に何か用?」
信之介「まぁ、用っちゃ用なんだけど」
ツバキ「一応教えておこうと思って…柊のこと。あなた誤解してるみたいね。」
猪熊「誤解?」
信之介「あぁ」
ツバキ「柊はあなたを‘助けたい’となんて、これっぽっちも思ってないわ」
猪熊「え?」
ツバキ「正確に言うと、柊は今まで誰一人として、‘助けたい’となんて思ったことはない。」
猪熊「あなた達…何言ってるの?」
信之介「柊には人を‘助けたい’という感情が無いんだ。柊が酷い人間だからとかそういうことじゃない。生まれた時からその感情が欠落しているんだよ。」
ツバキ「私達も最初は驚いたわ」
猪熊「それって、どういう…」
信之介「お前は人との関係を断つことで自分のことを隠そうとしているようだが、柊はその逆。人と関わり、より鮮明に自分のことを、正確には自分のキャラクターを相手に印象付けすることによって、本当の自分を隠している。」
ツバキ「あなたと話しているとき、彼は同情なんて一切してなかったのよ。同情することができなかった。その感情が、ないから。」
猪熊「それじゃあ…それじゃあ!なんであいつは私に関わってきたの!?どうせ私を期待させて、優越感に浸りたかったとか?」
信之介「怖かったんだよ」
猪熊「えっ…?」
ツバキ「柊は、幼いころに親友を一人亡くしている。彼自身のせいで親友を死なせてしまったの。」

●柊の独白
柊『以下、回想』
柊「俺には親友がいた。仮にそいつの名前をここではAと呼ぶとしよう。ある日俺はAと夕方まで近くの池で遊んでいた。そしてそこで起こった、本当に、本当に有りがちなアクシデント。Aが溺れた。そして俺はその時、何をしただろう。いや、何も出来なかった。溺れているAを見て、『Aが溺れている』としか思えなかったから。‘助けたい’という感情が無かったから。その感情さえあれば、助けを呼ぶこともできたのに。Aを救うことが出来たのに。そして経験も無かった。自分がどうしたらいいのかが分からなかった。無知ゆえの、そして無感情ゆえの殺害。Aは・・・・・死んだ」



猪熊「それってまさか」
ツバキ「そう。柊の親友は彼の‘助けたい’という感情が無いために命を落とした。だから彼はその日を境に、どういう時に人を‘助ける’かを、‘助けなければならない’かを必死に学んだ。もう誰も、死なせないために。」
信之介「だからあいつは他人を放っておくことが出来ないんだよ。」
猪熊「そして私が今回、‘助ける’人、‘助けなければならない人’と見なされた。そういうことでしょ?願望ではなく知識として。」
信之介「そういうことだ」
猪熊「でも、それをなんで私に教えるの?」
信之介「自分のためかな。あいつはそうは思ってないけど、俺たちはあいつに大きな貸しがある。」
ツバキ「それを返さなきゃ私たちの気が済まないのよね。それを返した上でちゃんと友達になりたいから」
信之介「まぁ、そんなのは建前で単純にあいつが困ってそうだったから、力貸しただけなんだけどね」
ツバキ「何もしないとか言っておいてね。」
信之介「だな」
猪熊「あなた達もしかして…」
ツバキ「ええ。あなたが思っている通りよ。」
信之介「今思えば懐かしいけどね」
ツバキ「まぁそういうことだから。あと、あいつはかなり面倒くさいから猪熊ちゃん頑張ってね。」
信之介「それじゃあまた学校で。」
●ツバキ・信之介、ハケ

〈シーン5〉
猪熊「頑張って。って、私にどうすればいいのよ・・・・・」
柊「ん?猪熊か?何してんだーこんなところで」
猪熊「・・・・・タイミング良すぎ。いや、むしろ悪い。最悪よ。まぁ主人公だからしょうがないけど、このタイミングは気持ち悪い…」
柊「何か聞いちゃいけないセリフ聞いた気がしたんだが。」
猪熊「気のせいじゃない?」
柊「今回は返事してくれるんだな。」
猪熊「・・・・・」
柊「また黙った。」
猪熊「さっき…」
柊「ん?」
猪熊「さっき、ツバキさんと、信之介君に会ったわ。」
柊「あっ、マジか。あいつら帰り一緒にスタ丼食べる予定だったのに、気づいたら居なくて。で、なんか話したのか?」
猪熊「アンタのことを話した。いえ、正確には、私はほとんど話さなかったから、話されたって感じね。」
柊「なるほど・・・・・じゃあ聞いたんだな?俺の過去の、そして今の話。」
猪熊「えぇ。」
柊「やっぱり…先回りされちゃったな~。やっぱアイツ等には敵わないよ。」
猪熊「あの二人は、借りを返すとか言ってたけど」
柊「借りね…」
猪熊「アンタ、今でも私の力になりたい?」
柊「あぁ、もちろん」
猪熊「じゃあ、助けたい?」
柊「あぁ。例え感情は無くても、考えることは出来る。」
猪熊「なるほどね。でも私の事を知ったらきっと関われなくなる。関わりたくなくなる。」
柊「そうは限らないさ」
猪熊「暴力。虐待。今学校では私がそれをされているって噂らしいわね。先生からよく呼び出されて、いろいろ聞かれたわ」
柊「てか、どうしたんだよ。いきなり話し出して。」
猪熊「アンタの過去知っちゃったから、今回は私が話すわ。」
柊「別に気にしなくても」
猪熊「いいから聞いて。」
柊「……分かった。」
猪熊「虐待の噂だけど、あれはあくまでも噂。事実ではない。私が虐待を‘受けている’ってところがね。」
柊「ん?どーいうこと?」
猪熊「暴力を振るっているのは親じゃない。私なのよ。この私。紛れもない、家庭内暴力。学校にしてきた包帯の傷は、暴力を振るわれたんじゃない。自分が暴力を振るった時に出来たものよ。暴力ってだけで、体は脆い女子高生だからね。相手にやった分、自分にも反動がある。まぁ包帯つけてきたのはわざとなんだけど。」
柊「わざとって?」
猪熊「人を遠ざけるため。基本的にみんな私みたいな女子には気を使って声をかけないから。私ね…人と、ある一定の関係を築くとそれを壊したくなるのよ。暴力によって、破壊したくなる。その最初の対象が親だった。きっとこの衝動は、学校生活にも生じてくる。医者はいつその衝動が爆発するか分からないって。だから私は人と壁を作った。壊れないように。そして壊さないように。」
柊「じゃあ、どうして最初、俺と友達になろうとした?」
猪熊「私は普段から話しかけられないように周りに振る舞っているつもりなんだけど、アンタみたいな奴が現れたら、壊したい欲求の方が勝ってしまう。まぁ、あんな風に話しかけられたのは初めてだったけど。でも、見抜かれてるって知って、私は怖くなって、友達になるのをやめたんだけどね」
柊「俺もこんな性格のせいで、変な直感がついちまった。人の闇に敏感になったってやつか。」
猪熊「それで?」
柊「それでって?」
猪熊「さっきの性格も含めて、アンタは私を助けたい?無理よね?だって、関係を築いても私が壊しちゃうもの」
作品名:ポーカーフェイス 作家名:月とコンビニ