ズッキーニが喋った…。
椅子に座ったおじいさんが見えるけど、この人が神様なのかは分からないままだった。
キリストはその人のことを神様だと言うけど、その人は喋るわけでもないので、私は首を傾げるばかりだった。
こんなことが始まって以来、ほとんど毎日お母さんと電話していた。
事あるごとにお母さんに伝えていた。
それは今起こっていることが本当なのか知りたい気持ちだったり、私が嘘を付いているんじゃないかと自分で自分自身を疑うので、お母さんに話してどう思うかの意見を求めたり、非科学的過ぎてどう受け止めたら良いのか分からないので、それを安定させるためだったりといろんな理由でお母さんを求めているということなのだ。
お母さんは驚きつつも結構安定してなんやかんやと答えてくれる。
分からないことも多々あるが…。
私はベランダで野菜を育てている。
まっ、家庭菜園というもの。
賃貸なので庭はなく、ベランダとなってしまう。
いろんな野菜を育てている中にズッキーニがいる。
苗を買ってきたり種を蒔いて育てたりとしている。
初めてのズッキーニは種からやってみた。
最初、芽が出て十センチほどは可愛かった。
がしかし、こんなにも葉っぱはでかく場所を取るのかと言うほど成長していった。
ベランダの歩くスペースがどんどんなくなる…。
毎回毎回、ズッキーニの葉っぱが足をする。
少しトゲトゲがあるのでたまに痛い…。
その度に、ズッキーニの葉っぱに文句を言っていた。
『邪魔な葉っぱ。デカすぎ!!もっとコンパクトになる気はないのかね~。』
とかいろいろ独り言のように言っていた。
そしてある時、ズッキーニの葉っぱに邪魔されずにベランダから部屋に入り、網戸を閉めていたら、
『うるさい!!』
と小さな声が聞こえた。
網戸を閉める手が止まった。
そしてそーっと振り返ったら誰もいるわけではなかった。
いないのに、ベランダの出入口の向かいにあるズッキーニに何故か目が行った。
私はまさかと思い、網戸を開けてそのズッキーニに、疑いながらゆっくり近付いた。
ズッキーニは低い位置にいるので少ししゃがんで凝視してみた。
何処の部分を見たらいいのか分からなくて困って、いろんな葉っぱやら蕾を見ていた。
しかし何も起こらなかった。
私は、“な~んだ。勘違い。”と思うとクルッと踵を返しまた部屋に入った。
もうさっきの声の事はその瞬間忘れてしまい、網戸を閉めていたら、
『あいちゃん(仮名;私)文句多すぎ!!』
とまたちょっと違う言葉が聞こえた。
私はすぐに振り向いた。
でも誰が言ったかは分からない。
私の空耳か…。
でもはっきりと聞こえた。
しかも多少口が悪いときた。
ズッキーニの右側にはピーマンがいる。
ズッキーニの左側にはもう一つズッキーニがいる。
ピーマンの位置から聞こえた感じはしない。
私の目はズッキーニに向く。
やっぱりこいつが喋ったか…?!
右と左、どっちのズッキーニだ…?!
恐る恐る右側のズッキーニに顔を近付けていたら、
『うるさい!!にらみ過ぎ!!』
と右側のズッキーニから聞こえた。
私は気付かない内ににらんでいたようだった。
そんなことはどうでもいい。
私はたじろぎ、慌てて家の中に入って、網戸を閉め窓も閉めた。
窓の下の部分はすりガラスなので、目から上を窓の上の部分からそーっと出してズッキーニを覗いた。
あいつは何も言ってこないし、状況も変わらない。
空は綺麗に晴れて穏やかな日だった。
そんな姿の自分に我に返ると立ち上がり、その場から何事もなかったかのように隣の部屋へと行った。
しばらくして私はふと思い出し、首を傾げた。
だからと言ってズッキーニを見に行ったわけではない。
そしてそこから慌てだし、手をガタガタさせながらお母さんに電話をかけた。
電話の呼出音が鳴る。
何回か鳴ってお母さんが出た。
私は落ち着くことが出来ず、切羽詰まったような声で、
『もしもし、お母さん。』
と言った。
そんな時ほどお母さんは安定して冷静に、
『はい、もしもし。』
と言うのだ。
私が大変なときほどお母さんは安定している。
私の声を聞いてそうなっているのかいつもたまたまなのかは分からない。
『お母さん、今ね、今ね、ベランダのズッキーニが…。』
と私が意を決して言おうとしていたら、ここでお母さんのテンションが上って、
『何、何?!今度はズッキーニ?!ズッキーニがどうしたの?!』
と私の何かを追い越してお母さんが興奮しだした。
そうなると私が何故か冷静になる…。
何故だろう。
人とはこういうものかと考えてしまう。
私はお母さんのテンションを無視して、
『お母さん、ズッキーニが喋った!!』
と遂に言った。
一瞬、お母さんは固まったようで、
『……ズッキーニが喋った…?』
と私の耳に届いた。
『そうそう、ズッキーニが喋った。部屋の中に入ろうとしたら、私の背中に向かって“うるさい”って言った。』
私はお母さんがどう驚くだろうかと反応を待った。
お母さんは考えていたようで、
『…ズッキーニに口があるの?』
と聞いてきた。
私の想像していた反応ではなかったので、返す言葉も見つからず、やっと出た言葉が、
『口?!』
だった。
『そうそう。ズッキーニに口があったかなぁ~と思って。』
とお母さんは当たり前の如く話し続けている。
『ズッキーニに口なんかないよ~。』
と私はちょっとイラッとして言った。
『そうよね~。やっぱりそうだと思った。あなたがズッキーニが喋ったとか言うから、お母さんズッキーニに口があったかな~って思ったじゃないの。ズッキーニに口はないのね?!それでいいのね?!』
と何故かお母さんもだんだんイラッとしてそう言ってきた。
私は電話越しに首を傾げながら、
『うん。口はない。』
と答えた。
『じゃあどうしてズッキーニが喋ったって分かったの?!口がないのに…。』
お母さんのその言い分を聞いてようやくお母さんの返しが何でそう言ったかが分かった。
『私も最初はおかしいと思ったよ。空耳かと…。またその後にも“文句多すぎ”とか“にらみ過ぎ”とか言われた。誰が言ったのか探してみたらズッキーニだった…。』
と説明したら、
『どうして探せたの?口が無いのにどうして“うるさい”とか言ったのが分かったの?』
と聞いてきた。
『言葉が聞こえたっていうか言葉が届いたって言ったほうが分かりやすいかも…。キリストの声が聞こえるのと同じで言葉が届くって感じ。探せたのは…、大体こっちの方向からだろうな~っていう方向がズッキーニの所だったの。それで見てたら、“にらみ過ぎ”って言われたの。それでこいつが喋ったんだ~って分かったの。』
私も何もかもが分かるわけじゃないので、出来る限り伝えた。
でもお母さんは分かってくれたようで、
『ほお~、なるほど~。そういうことか~。もしかしてみ~んな神様がいること知ってるんじゃないのかなぁ~。…いや~、知らないのは人間だけで、それ以外は知ってる気がする。』
と言い出した。
私はたまげて、
『そんなことある~!!犬も猫も動物、植物などなど?…ウソ~!!それはないよ~。』
と私はお母さんの言い分をあしらった。
でもお母さんは引かない。
キリストはその人のことを神様だと言うけど、その人は喋るわけでもないので、私は首を傾げるばかりだった。
こんなことが始まって以来、ほとんど毎日お母さんと電話していた。
事あるごとにお母さんに伝えていた。
それは今起こっていることが本当なのか知りたい気持ちだったり、私が嘘を付いているんじゃないかと自分で自分自身を疑うので、お母さんに話してどう思うかの意見を求めたり、非科学的過ぎてどう受け止めたら良いのか分からないので、それを安定させるためだったりといろんな理由でお母さんを求めているということなのだ。
お母さんは驚きつつも結構安定してなんやかんやと答えてくれる。
分からないことも多々あるが…。
私はベランダで野菜を育てている。
まっ、家庭菜園というもの。
賃貸なので庭はなく、ベランダとなってしまう。
いろんな野菜を育てている中にズッキーニがいる。
苗を買ってきたり種を蒔いて育てたりとしている。
初めてのズッキーニは種からやってみた。
最初、芽が出て十センチほどは可愛かった。
がしかし、こんなにも葉っぱはでかく場所を取るのかと言うほど成長していった。
ベランダの歩くスペースがどんどんなくなる…。
毎回毎回、ズッキーニの葉っぱが足をする。
少しトゲトゲがあるのでたまに痛い…。
その度に、ズッキーニの葉っぱに文句を言っていた。
『邪魔な葉っぱ。デカすぎ!!もっとコンパクトになる気はないのかね~。』
とかいろいろ独り言のように言っていた。
そしてある時、ズッキーニの葉っぱに邪魔されずにベランダから部屋に入り、網戸を閉めていたら、
『うるさい!!』
と小さな声が聞こえた。
網戸を閉める手が止まった。
そしてそーっと振り返ったら誰もいるわけではなかった。
いないのに、ベランダの出入口の向かいにあるズッキーニに何故か目が行った。
私はまさかと思い、網戸を開けてそのズッキーニに、疑いながらゆっくり近付いた。
ズッキーニは低い位置にいるので少ししゃがんで凝視してみた。
何処の部分を見たらいいのか分からなくて困って、いろんな葉っぱやら蕾を見ていた。
しかし何も起こらなかった。
私は、“な~んだ。勘違い。”と思うとクルッと踵を返しまた部屋に入った。
もうさっきの声の事はその瞬間忘れてしまい、網戸を閉めていたら、
『あいちゃん(仮名;私)文句多すぎ!!』
とまたちょっと違う言葉が聞こえた。
私はすぐに振り向いた。
でも誰が言ったかは分からない。
私の空耳か…。
でもはっきりと聞こえた。
しかも多少口が悪いときた。
ズッキーニの右側にはピーマンがいる。
ズッキーニの左側にはもう一つズッキーニがいる。
ピーマンの位置から聞こえた感じはしない。
私の目はズッキーニに向く。
やっぱりこいつが喋ったか…?!
右と左、どっちのズッキーニだ…?!
恐る恐る右側のズッキーニに顔を近付けていたら、
『うるさい!!にらみ過ぎ!!』
と右側のズッキーニから聞こえた。
私は気付かない内ににらんでいたようだった。
そんなことはどうでもいい。
私はたじろぎ、慌てて家の中に入って、網戸を閉め窓も閉めた。
窓の下の部分はすりガラスなので、目から上を窓の上の部分からそーっと出してズッキーニを覗いた。
あいつは何も言ってこないし、状況も変わらない。
空は綺麗に晴れて穏やかな日だった。
そんな姿の自分に我に返ると立ち上がり、その場から何事もなかったかのように隣の部屋へと行った。
しばらくして私はふと思い出し、首を傾げた。
だからと言ってズッキーニを見に行ったわけではない。
そしてそこから慌てだし、手をガタガタさせながらお母さんに電話をかけた。
電話の呼出音が鳴る。
何回か鳴ってお母さんが出た。
私は落ち着くことが出来ず、切羽詰まったような声で、
『もしもし、お母さん。』
と言った。
そんな時ほどお母さんは安定して冷静に、
『はい、もしもし。』
と言うのだ。
私が大変なときほどお母さんは安定している。
私の声を聞いてそうなっているのかいつもたまたまなのかは分からない。
『お母さん、今ね、今ね、ベランダのズッキーニが…。』
と私が意を決して言おうとしていたら、ここでお母さんのテンションが上って、
『何、何?!今度はズッキーニ?!ズッキーニがどうしたの?!』
と私の何かを追い越してお母さんが興奮しだした。
そうなると私が何故か冷静になる…。
何故だろう。
人とはこういうものかと考えてしまう。
私はお母さんのテンションを無視して、
『お母さん、ズッキーニが喋った!!』
と遂に言った。
一瞬、お母さんは固まったようで、
『……ズッキーニが喋った…?』
と私の耳に届いた。
『そうそう、ズッキーニが喋った。部屋の中に入ろうとしたら、私の背中に向かって“うるさい”って言った。』
私はお母さんがどう驚くだろうかと反応を待った。
お母さんは考えていたようで、
『…ズッキーニに口があるの?』
と聞いてきた。
私の想像していた反応ではなかったので、返す言葉も見つからず、やっと出た言葉が、
『口?!』
だった。
『そうそう。ズッキーニに口があったかなぁ~と思って。』
とお母さんは当たり前の如く話し続けている。
『ズッキーニに口なんかないよ~。』
と私はちょっとイラッとして言った。
『そうよね~。やっぱりそうだと思った。あなたがズッキーニが喋ったとか言うから、お母さんズッキーニに口があったかな~って思ったじゃないの。ズッキーニに口はないのね?!それでいいのね?!』
と何故かお母さんもだんだんイラッとしてそう言ってきた。
私は電話越しに首を傾げながら、
『うん。口はない。』
と答えた。
『じゃあどうしてズッキーニが喋ったって分かったの?!口がないのに…。』
お母さんのその言い分を聞いてようやくお母さんの返しが何でそう言ったかが分かった。
『私も最初はおかしいと思ったよ。空耳かと…。またその後にも“文句多すぎ”とか“にらみ過ぎ”とか言われた。誰が言ったのか探してみたらズッキーニだった…。』
と説明したら、
『どうして探せたの?口が無いのにどうして“うるさい”とか言ったのが分かったの?』
と聞いてきた。
『言葉が聞こえたっていうか言葉が届いたって言ったほうが分かりやすいかも…。キリストの声が聞こえるのと同じで言葉が届くって感じ。探せたのは…、大体こっちの方向からだろうな~っていう方向がズッキーニの所だったの。それで見てたら、“にらみ過ぎ”って言われたの。それでこいつが喋ったんだ~って分かったの。』
私も何もかもが分かるわけじゃないので、出来る限り伝えた。
でもお母さんは分かってくれたようで、
『ほお~、なるほど~。そういうことか~。もしかしてみ~んな神様がいること知ってるんじゃないのかなぁ~。…いや~、知らないのは人間だけで、それ以外は知ってる気がする。』
と言い出した。
私はたまげて、
『そんなことある~!!犬も猫も動物、植物などなど?…ウソ~!!それはないよ~。』
と私はお母さんの言い分をあしらった。
でもお母さんは引かない。
作品名:ズッキーニが喋った…。 作家名:きんぎょ日和