賞味期限切れ
明美は彼を見た。まるで懇願するようなまなざしだ。けれど、彼は表情を変えなかった。「終わったの?」
「終わったさ。それを告げるために来てもらった」
明美は封筒を受け取った。意外に分厚かった。1万円札ならゆうに数百万はある。
「いいじゃないこれで」と自分に言い聞かせ、さよならは言わず、彼の視界から消えた。
部屋に戻った。
独りの夜が始まる。
今夜は酔おう。独りで。派手な音楽でもかけて。
酔いが回った頃、封筒を取り出してみた。入っていたのは一万円札の札束ではなく、千円札だけの札束だった! せいぜい数十万だ。明美は思わず封筒を壁に投げつけた。すると千円札が散乱した。そして明美は狂ったように笑った。