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連載小説「六連星(むつらぼし)」 56話 ~60話

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 被曝により、ガンや白血病などの病気が発症しやすくなるといわれている。
それ以外のごく一般的な病気の発生率なども同様に増加傾向を示すと
言われている。
チェルノブイリ原発事故の場合を引用すると、被曝による被害者達はその多くが
白血病や脊柱や肺の癌、膀胱癌、腎臓癌、甲状腺癌、乳癌などといった
放射線による特有の病に苦しめられている。
また被曝により、通常より多くの人が亡くなるという事例も報告されている。
被ばくにより心臓や血管への疾患が、より多く高い確率で発生をするためだ。
強い放射能に汚染された地域では、80%にのぼる子どもたちが心臓疾患や
肝臓障害、腎臓病、甲状腺疾患、抗体などの異常を抱えている。


 また母親の子宮内にいるうちに被曝を受け、生まれてきた
子どもたちの中には、脳の発達停止や白内障、遺伝子の突然変異、
先天性の奇形、神経系異常や水頭症などの疾患も、数多く発生している・・・・


 「被ばくによる病気の勉強ですか。いつも熱心ですね」

 背後からの声に驚ろいた響が、反射的にパソコンを閉じる。

 「あ、構わないでください。
 突然、勉強の邪魔をした私のほうが悪いのですから」

 検索に熱中していた響は、山本が帰って来たたことに気がつかなかった。
(万事休す。)観念した顔で、響が山本を見上げる。
響の動揺をよそに山本がテーブルを挟んで、相向かいに腰をおろす。


 「そんなに緊張しなくも、大丈夫です。
 私の病気が、被ばくによるものであり、余命もそれほど残っていないことも、
 せでに、ぜんぶ承知をしています。
 原発労働者として、20年以上もあちこちの原発で働いてきた身体です。
 いつか発症するであろうと言うことを、覚悟の上でみんな働いているんです。
 福島のあの震災で生き残っただけでも、幸運です。
 そういえばあなたは、最前線の広野町まで行ってきたそうですね。
 とても、勇気ある行動だと思います」


 「はい、ある人からすすめられたからです。
 被災地の本当の姿が見たければ、最前線の広野町へ行けと教えられました」

 「私は第一原発の下請けの保安要員として、ずうっと福島へ居ました。
 爆発以来。Jービレッジから毎日、がれきの撤去のために動員されましたが、
 2ヵ月ほどで体調を崩したために、後方へ送られました。
 あの水素爆発の騒動の中では、誰がどれだけの量を被ばくをしたのか、
 正確な数値はほとんど記録されていないし、実態もわかりません。
 もともと放管手帳などというものは、年がら年中、
 訂正で書きかえられています。
 自分がどれだけ被ばくしているか、それは誰にもわかりません。
 原発の現場なんてものは、実はそれほど、いい加減なものですから」

 「放管手帳って、何なのですか?」

 「放射線管理手帳と呼ばれているものです。
 原子力施設の管理区域内で作業に従事する場合は、あらかじめ
 放管手帳を取得する必要があります。
 昭和52年に、「放射線管理手帳制度」という形で誕生をしたものです。
 全国を一元化することで、運用が開始されました。
 まず、中央の登録センターに登録されます。
 手帳には、顔写真、登録番号、氏名と生年月日、異動経歴と被ばく歴などの、
 固有の情報がそれぞれ記入されていきます。
 ですが運用の実態は、実はきわめてずさんなものです」


 「ずさん?。一元化されて、管理されているはずなのに、
 それは実情とは異なる運用が、横行していると言う意味ですか・・・・」

 驚いた響が、鋭い視線で山本の顔を見つめる。
見つめられた山本が溜めていた息を、ゆっくりと吐き出す。


 「はい。実態からは大きくかけ離れています。
 浴びた放射能の線量が、法で定められた5分の1という数値にもかかわらず、
 浜岡原発では、わずか29歳の青年が白血病を発症して
 2年後に亡くなっています。、
 これは放管手帳のもっている、ずさんな実態を示す
 ひとつの事例にすぎません。
 法律で定められ、安全であったはずの線量の5分の1で、
 なぜ発病をしてしまうのか、
 そこには浜岡原発で造られた、巧妙なからくりが隠されているからです」


 「ずさんなからくりが、放管手帳には隠されているのですか?・・・・」

 山本の言葉に思わず響が、強い反応をしめす。


 
(61)へつづく