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通り雨の中で

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突然の土砂降りで、傘を開く間もなく私はずぶ濡れになった。
もういいや。
軽く自暴自棄になりながら、その土砂降りの中を、傘をささずに歩いた。
制服のスカートは足に張り付き、ローファーの中はすでにピチャピチャと音を立てている。
このまま雨に打たれていれば、この頬を伝う涙もきっと誰にも気づかれないだろう。
私は泣いていた。
たたんだままの傘を振り回しながら、家へと続く坂道をゆっくり下っていく。
すれ違う子どもが不思議そうにこっちを見ていた。
心を見透かされたようで、つい目を背けてしまった。
いつもそうだ。
嫌なものからは目を背けてしまう。
自分に都合の良いものばかりを見てしまう。
その結果が、さっき偶然見てしまったものだ。
涼太が。幼なじみで、いつも隣にいた涼太が、知らない女子と一緒に歩いていた。手をつないでいた。
どうして。
もっと自分の気持ちを素直に見つめることができていたなら。
手遅れになって、初めて気づくなんて、私は本当にバカだ。
自分を責める言葉だけが頭の中をぐるぐると巡っている。
「明日、どんな顔して会えばいいんだろう」
つぶやき、空を仰いだ。
いつの間にか、雨はやんでいた。
セミたちがまた鳴き始める。
うるさい。
何もかもが、自分をバカにしているような気がした。
うるさい。
水たまりをわざと踏んで歩く小学生。
うるさい。
改造で無意味に音を大きくさせたバイクが通り過ぎる。
うるさい。
大声で話しながら通り過ぎていく主婦たち。
うるさい。
それら全ての音たちが、風船のように膨らんでいって、私の頭をいっぱいにしていく。
耳をふさいでも聞こえる。
どうして。
嫌だ。
音はどんどんふくらんでいく。
そして、ついに、弾けた。
「詩織っ!」
え。
振り返ると、見慣れた男子学生が一人。
「あ、涼太」
作品名:通り雨の中で 作家名:@龍太郎