WonderLand(上)
日向と日陰、人間の真実はどっち?
「行こう」
そう云うウサギは、まるで遊園地でアトラクションに誘うかのような軽い足取りで、「早く」と改札をくぐっていった。
怖いことは何もないのです、陽のあたるものは、陽のあたらないものがあるから。存在するのは、影があるから。
真っ白な手を差し出して、彼女はその小さな手を取った。
これは運命なのだ。アリスがウサギを追い掛けていくのは、運命なのだ。ウサギを追い掛けなくては、アリスの物語は存在しないのだ。
追い掛けてたどりつく先が、日向の世界ではなくても。陰の世界であったとしても。あたしは、逃げることはできない。
作品名:WonderLand(上) 作家名:紅月一花