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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ローゼン・サーガ

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 キースはローゼンだけを感じ、彼女をついに見つけ出した。だが、ローゼンの精神はソーサイアに呑み込まれようとしていた。
 ソーサイアの顔だけを残すその黒く巨大な塊の中に、埋もれるようにしてローゼンの身体は吸収されようとしていた。
 キースの頭に直接ソーサイアの声が流れ込んで来た。
《全てを呑み込んでくれる……全ては私の力に……私こそが全てだ……》
「キース様っ!」
 やはりキースが自分を助けに来てくれた。ローゼンの手がめい一杯、未来に向けて伸ばされた。
 キースもまた手を伸ばしローゼンに駈け寄る。
 黒い触手がキースを捕らえようと襲い掛かって来る。だが、キースはローゼンの手を掴むために走り続けた。触手がキースの身体に絡みつき、〈混沌〉が侵食を開始する。
 〈混沌〉に身体を侵食されながらもキースはローゼンの手を掴んだ。互いの手はしっかりと握り締められ、二人は一人になった。
 キースとローゼンの身体が激しい光に包まれ、その光の波動はローゼンを侵食しようしていた〈混沌〉を吹き飛ばした。
 ソーサイアは苦悶の叫びをあげ、全ての闇を消し去った。
 光の世界に残されたキースとローゼンは互いを確かめるように熱い抱擁を交わし、慈しみ合い、二人の身体が溶け合っていく――。
 そして、二人は未来の夢を視た。
 空がなくて、木がなくて、固められた灰色の地面の上に巨塔が立ち並び、その間を大勢の人々が世話しなく歩いている。
 金属でできた乗り物が地上を走り、巨大な金属の鳥が空を飛び交い、人々は天空のその先にある星々を目指して旅立って行った。人々は夢を叶え、その夢は尽きることなく、人々の欲望は尽きることを知らなかった。
 薄汚い私欲を肥やすために自然を破壊し、惑星の全てをただ残酷に蝕んでいく。魔導がなくなろうと、精霊や神々が消えようと、世界が創り治そうと、世界は崩壊しようとしていた。――これが未来なのか? なのだとしたら、なんと哀しい未来なのか……。
 一人となったその〈存在〉は嘆き哀しみ、自分たちの世界を想い夢見た。二人が出逢った、あの世界。二人が愛したあの世界を想像し、創造した。
 空と海が切り離され、大地が広がり、世界は生命に満ち溢れ、全てが元通りに戻った。ただ、ひとつだけ世界から消えてしまったものがある。――それは魔導。
 力の象徴であった魔導はもういらない。
 還って来た世界で二人を出迎えてくれた仲間。皆うれしそうな顔をして笑っていた。
 幸せが二人を包み、未来は――。