割レ割レハ
諸星 その生物は夢を好んで食するんだ。そこで、夢を見る生物の宝庫であるこの惑星に目を付けた。この星中の夢を食するため、とあるエージェントを派遣したんだ。そしてエージェントは、恐るべき早さで増殖した。時間が無い。
松下 ハリウッド映画かなにかか?
諸星 少年の部屋のガラスを割った宇宙人は、宇宙環境保護団体の職員なんだ。あれでもな。あいつと手を組まないと地球は滅ぶぞ。
松下 まったくもって、信じられん。大体なんだ、そのエージェントって。
諸星 ミッ『ピ――』だ。
松下 は、なにっ、ミッ『ピ――』がエージェント!
諸星 全ての人を夢の国へと閉じ込めてしまう鼠、夢の国の住人、ミッ『ピ――』。
松下 じゃ、じゃあ、ドナルなんとかとか、グーなんとかとか、ミなんとかニーとかもエージェントなのか!
諸星 彼らはみんな、ミッ『ピ――』に騙されてるんだ!
松下 なんてやつだ!
諸星 ミッ『ピ――』は地球に来て以来、ねずみ算式で増えていった、文字通りな。
松下 どうすればいいんだ。ドナなんとかルドや、グーフィなんとかや、ミニーなんとかを助けるにはどうすれば!
諸星 隠れてないぞ。そして人はいいのか?
松下 ひと…? そうか、『ピ――』ターパンも騙されて…!
諸星 隠れてる? ねえそれ隠れてる?
松下 ちなみに俺が好きなのは『ピ――』さん。くまの『ピ――』さん。
諸星 君が望むなら、彼らを救う力を与えよう。
松下 いいのか?
諸星 ああ、あの宇宙人と一緒に地球を救うのならば。ただし…。
松下 『ピ――』ターパンやくまの『ピ――』さん、不思議の国のアリス『ピ――』を救えるのならば、どんな代償でも!
諸星 もはや、仕事してないね、『ピ――』がね。改造人間になってもらう。元の体にはもう戻れない。
松下 それってもしかして…!
諸星 そう、御面ライダーだ!
松下 御面、ライダー!
諸星 凄いぞー、かっこいいぞー。プリキュなんとかの御面だぞー!
松下 プリキュアかー!
諸星 月に代わって、お仕置きよ!
松下 俺はいったいどうすれば…。
●宇宙人がイリ、部屋に入ろうとする。
諸星 だから、君の身体を俺にくれ。
宇宙人 えっ…!
松下 …、分かった。ろくに鍛えてない、だらしない俺の身体で良ければ。
諸星 だからいい。
松下 そうなのか?
諸星 開発のしがいがある。
宇宙人 …っ!
松下 心を決めたよ。俺のすべてをゆだねるよ。
諸星 よく言った、男だな。
松下 『ピ――』の為なら怖くない。
諸星 そういえばさっき、好きって言ってたもんな。
宇宙人 おほん、おほんおほん!
松下 ああ、可愛いんだよなぁ。べとべとの手を舐めたり、下半身露出してたりして。
諸星 考えたらそうだな。あ、すまんお手洗いをお借りするよ。
●諸星ハケようとして、宇宙人とはちあわせる。
宇宙人 あ…。
●諸星はグッドのサインをしてハケ、宇宙人部屋に入る
宇宙人 あ、あのう、粗茶ですが…。
松下 ああ、ありがとう。
宇宙人 あの、さっきの会話…。
松下 俺はさ、お前を勘違いしていたみたいだ。
宇宙人 え?
松下 俺たち、悪くないかもしれないな。
宇宙人 えっ!
松下 ガラスのことや態度のこともあるけど、今後、身体を張ってくれればいいから。
宇宙人 か、身体を! けど、今日、会ったばかりだし。
松下 会ったのに、昨日も今日もあるかよ。これから俺たちが成すことは、すべて俺たちの明日に繋がるんだ。
宇宙人 ま、まあ、そうかもしれないけど。こちらの気持ちもあるっていうか。
松下 お前の気持ちはわかってる。俺も同じ気持ちだ。
宇宙人 あ、あの、別に嫌って訳じゃないけど、物事には順序ってものが。
松下 そうか、宇宙人と地球人が手を取り合うんだもんな。ルールがあるんだな。
宇宙人 は、はい。
松下 それで、何から始めればいいんだ?
宇宙人 そ、その、さ、最初は、き、キスから。
松下 き、キスっ!
宇宙人 み、妙なトコは、純情なんだね。
松下 ば、馬鹿野郎。ま、まあ、異文化交流だもんな。
宇宙人 かっこ意味深。
松下 郷に入れば郷に従えだ。いくぞ。
宇宙人 あっ。
松下 目ぇ瞑れよ、なんか、緊張すっから。
宇宙人 うん。
諸星 ごめーん、トイレってどこ?
●諸星イリ
諸星 ん?
宇宙人 んあっ!
松下 ん?
三人 …。
諸星 しーつーれーい。
●諸星ハケ
●暗転しつつ、もろもろの悲鳴とかが聞こえる。
終わり
※台本に登場する固有名詞は全て、実在するキャラクターとは一切関係がありませんよ?