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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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【ポールテン】(4)



「どこだ! どこにある!」

 俺は、必死に「ある商品」を探していた。その商品は、新製品で特上品のマリファナタバコだ。商品名は『ウィレム』という。
 あの商品なら、絶対に売れる自信がある! 元々の商売相手への紹介用だったが、この際だから売ってやろう! これは、オランダ一の大麻商人としてのプライドがかかっている!

「あったあった」
操縦席の下に、そのマリファナタバコは転がっていた。『ウィレム』という金色の文字が、わずかに差し込む日光で輝いている。なんとも美しい輝きだ。
 傷をつけないよう、それを慎重にリュックにしまう。そして、野宿に必要な物も、リュックの中へ。あの2人が、嫌がらせをしにやってくるかもしれない。だから、どこかへ身を隠すのだ。この鬱蒼としたジャングルの中ならば、どこかに隠れ場所があるだろう。念のため、「コレ」も持っていこう。

「おい! そこを動くなよ!」

 一瞬だけビクリとしてしまったが、あのイギリス少年の声だとわかった。「コレ」さえあれば、どんなガキもおとなしくなるだろう。
「誰に動くなって?」
イギリス少年に、ピストルを向ける俺。子供相手にカッコ悪いが、これはただの脅しだ。
「ふざけるなって……」
銃口を向けた途端、ビビるガキ。当然の反応だ。
「しばらくその場でじっとしていろよ! 追いかけてきやがったら、額を撃ち抜いてやるからな!」
「…………」
すっかりおとなしくなりやがった。

 ガキが変なことを思いつかないうちに、俺はジャングルの奥へ消えることにした。悠々と去る俺を、ガキは悔しそうに見送ってくれた!


 蒸し暑いジャングルの中を疾走する俺。まるで、アクション映画のワンシーンだ。こんな疾走劇を繰り広げるのは、久しぶりのことだ。商売上、こういう危機には慣れている。
 ただ、なぜか今回の場合は、中央アフリカで遭遇した最悪の危機と同じぐらいに思えた……。命に関わる危機ではないはずなのにだ。
 俺は走りながら、その最悪の危機のことを思い出す。