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それが家門なら

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2 家系図の対価



(1)

-家系図なんて
金で売り買い
するものじゃない-

ご高説は
承るが

だからって
僕が売り買い
しないのは
君が力説
するような

“家族の系譜”
“祖先の記憶”

そんな高尚な
理屈に媚びて
崇めて敬うからじゃない

手間ひまかけて
追いかけたって
たかが紙切れ
綴じた紙束

売りと買いとが
気まぐれ過ぎて
儲けが
安定しないから

大した金にも
なりゃしないから

それだけだ

金にならない
がらくたに
僕は興味も
欲もない

1ウォンだって
払う気もない

その僕が
よりにもよって
その家系図に
執着せざるを
得なかった

我が家と同じ
「李」という苗字で
そこそこの
名家と踏んだ
家系図だから

親父が
死ぬほど
欲しがってるから

どれだけ大枚
はたいても
その家系図を
手に入れる
孫子のために
新たな家門を
興すんだと

赤貧の出から
這い上がり
寝言にまで言う
親父の夢を
子として無下に
笑えない

何の因果か
人手を巡って
今やとうとう
君の手にある
その家系図に

譲ってくれと
日参し
望みの額を
即支払うと
まとわりつくのは
そのためだ

君はもちろん
ここぞとばかり
即刻 見事に
拒んでくれた

金に対する
嫌悪感か
学者としての
良心か
はたまた
僕への
当てつけか

言い値で売れる
儲け話も
君には全く
猫に小判

と言って
語弊があるなら
学者に小判と
言い直そうか?


(2)

「娘として
孫として
傾きかけた
家業の行く末
気にならない?

何なら金を
融通しよう

預かり物の
あの家系図を
譲ってくれる
見返りに」

しびれを切らして
僕が体よく
ふっかけてみた取引も
君はあっさり
つっぱねた

「誰かが代々
命を賭けて
守ろうとしてる
家系図を

うちの家業が
助かるくらいの
融資の額と
引き換えになんて

安すぎて
釣り合わなくて
とてもじゃないけど
売る気になれない」

そうつっぱねた

商売柄
根くらべなら
滅多なことじゃ
人に負けない

そっちが首を
縦に振るまで
青天井で
吊り上げてやる

ほくそ笑んだのも
束の間だった

「どうせなら
その命くらい
賭けてみない?

そしたら私も
売る気が
湧くかも

家系図を
買うってつまり
ある一族の
歴史を買うに
等しいわけでしょ?

赤の他人の
歴史を買うほど
大それたこと
企むなら

自分の命の
1つくらい
お安いものだと
思うけど」

そもそも
次元が
食い違ってた

額の応酬
想像したのに
命うんぬん?

-お宅が持ってる
お金なんか
価値もなければ
興味もない-

-この取引に
見合う対価は
お金になんか
換算できない-

大意はこんな
ところだろうが

-常識の
かけらもなければ
人間味もない
お宅なんかじゃ
命まで
賭けたところで
見合うかどうか-

君の目つきや
言葉尻から
察するに
本音は
こんなところだろう

見かけは
無口で上品で
虫も殺さぬ
顔してるのに

人の頭に
血を上らせる
コツなり
ツボなり
よく心得てる

涼しい顔で
突きつける
君の一言一言が
僕の神経
逆なでた

商売人でも
ない相手に
ましてや女の
君相手に

挑発されて
カチンと来て
埒もない
商人の血が
沸いてたぎって
もて余した

「家系図は
近々必ず
手に入れる

お望みどおり
命を賭ける

でもその前に
ひとつ訊きたい

僕が命を
賭けたとして
君のその手に
負えるかな?」

数日後
売られたケンカを
買うついでに
君を一言
おちょくった

また癖が出た

作品名:それが家門なら 作家名:懐拳