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それが家門なら

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1 引っ叩かれて



(1)

どしゃ降りの済州(チェジュ)
夜更けの空港
仁川(インチョン)行きの
搭乗間際

チケットを
譲ってくれと
急用なんだと
礼はすると

切羽つまった
女が僕を
呼びとめた
君だった

-価値に見合えば
支払う対価は
惜しまない-

商売人の
鏡たりうる
モットーに

「何でも金で
片付けたがる」と

面と向かって
眉をひそめて
楯突いてきた
女の顔だ
忘れるもんか

善人ぶっても
お里は知れてる
うっぷん晴らしが
優先だ

じらして
拒んで
諭してやった

「悪いがこっちも
急用なんだ
礼と言うなら
1億でどう?

世間じゃこれを
君が嫌いな
金の力と
呼ぶらしいけど」


(2)

そしてか
だからか
知らないが

以後3度
顔を合わせる
たびごとに

容赦の
かけらもない
平手打ちを
見舞われた

「名門宗家の
曾孫なら
たかが1億
ケチったりする
べきじゃなかった
そしたら
死に目に
会えたのに」

曾祖父さんの
葬式とやらで
再会の
挨拶代わりに
からかってみた
瞬間だった

悲嘆にくれて
声もない
曾孫娘の
遠慮会釈のない
平手打ちが
飛んできた

1度目だった

またある日

ある家系図を
「売れ」「売らない」と
僕が2か月
押し問答を
繰り返してる
君の上司の
老いぼれ教授の
石頭にも
さることながら

その石頭を
かばい立てして
飽き足らず

僕に向かって
目上の人への
非礼をなじる
堅物の君に
辟易して

「親子ほどにも
年の離れた老教授
そこまでかばう
わけでもあるのか
世間にはばかる
間柄か」と

当たり散らして
下種の勘ぐり
口ついた日に
2度目を食らい

「学生相手の
色恋沙汰に
うつつ抜かして
務まるなんて
学者先生も
いい御身分だ」と

微笑ましい
師弟の会話を
通りすがりに
おちょくった日に
3度目食らった

1度目だけは
正真正銘
不意だった

だけど
2度目と3度目は
引っ叩かれるに
充分なほど
浴びせた侮辱が
えげつないのは
判ってた

そして何とも
不思議なことに

この女なら
引っ叩かれても
構わない
そう思いながら
口走ってた

奇縁
悪縁 
はたまた因縁

君の心に
どう映ろうと

君のその
容赦なく
人を射る目が
小気味よかった

ちょっかい出して
おちょくるたびに
君の目に
ありありと宿る
敵意と侮蔑に
ぞくぞくした

それがたとえ
頬の痛さと
引き換えにでも

損はないほど
ぞくぞくした

作品名:それが家門なら 作家名:懐拳